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運用型広告の代理店を変更したくなったら

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代理店変更を繰り返すデメリットは?

リスティング広告に代表される運用型広告は、短期的なキャンペーンではなく、企業の集客チャネルの一つとして比較的長い期間改善を繰り返しながら利用されることが多いと思います。


運用が行われるということは、アカウントに残っていく実績が改善のための分析対象として資産化するということになるので、長くアカウントを保持すれば、比較対象となるデータは増え、過去の推移を元に改善を行うことができます。逆に言えば、頻繁にアカウントが変わったり、突発的なキャンペーンが多用される場合はその資産を有効に活用することが難しくなるということです。

一方で、改善のためのPDCAサイクルが定期的に回っていなければ長い間同一アカウントが保持されているという事実にあまり意味はありません。

運用型広告は設計の巧拙や緻密な運用によってパフォーマンスが何倍にも変わることが往々にして起きますので、広告主が「今の代理店では十分なパフォーマンスは上げられていないのではないか?」「他のパートナーにお願いすればもっと良い結果が得られるのでは?」という疑念を持つのはある程度仕方がないことなのかもしれません。

こういった悩みに洋の東西はないようで、パートナーとなる代理店を頻繁に変える例は、日本でも欧米でもあるようです。少し前のものですが、Search Engine Journal に、一部の広告主が代理店変更を繰り返す行為について警鐘を鳴らした記事が掲載されています。


5 Reasons Why PPC Advertisers Shouldn't Switch from Agency to Agency
http://www.searchenginejournal.com/5-reasons-ppc-advertisers-shouldnt-switch-agency-agency/68062/



企業によって事情はさまざまなので、運用型広告のパートナーを選択するための明確な判断基準はありませんが、改善を繰り返していきながら成果を上げていくタイプの運用型広告に関しては、少なくとも短期間に代理店を(≒アカウントを)頻繁に変えることはあまり得策でないことの方が多いかもしれません。

ここでは、上記の記事を抄訳しながら、広告主と代理店のパートナーシップについて考えてみたいと思います。


運用型広告の代理店を頻繁に変更すべきでない5つの理由


この記事では、以下の5つの理由で、代理店を次から次へと変更しない方がいいと伝えています。

1) 新しい代理店は、常にゼロから始めなければいけない

新しい代理店との仕事をスタートさせるということは、多くの場合代理店がスクラッチでアカウントを作成することになります。AdWordsなどのリスティング広告のコンサルタントは、多くの場合自分なりのカテゴライズの方法、キャンペーンの設計スタイルを持っています。この設計プロセスこそが、アカウントの生産性に直結するからです。

個人的に言えば、私は独自のやり方でキャンペーンを作成し、そのルールを他のアカウントでも適用しています。どのアカウントを見ても、そのアカウントで何が起こっているのか、何から手を付けていいかがすぐにわかるからです。

しかしながら、他の代理店が管理しているアカウントを見るのはとても大変です。前代理店の設計方針を理解した上で分析し提案するのにはとても多くの時間と労力が必要になります。

よい代理店であれば、前のアカウントでの結果を考慮に入れて新しいキャンペーンを作るでしょうが、多くの場合、以前に失敗したキーワードや広告を再度入稿することになるでしょう。なぜなら、みんな「自分だったら結果が出せる」と思っているからです。


2)新しいチャレンジは後回しになる

スクラッチで新しいキャンペーンを作成し、初期の立ち上げにいそしんでいる間は、頻繁に更新される AdWords の新しいフィーチャーや新しい別の製品を試す余裕はないことが多いので、必然的に先進的な試みは後回しになります。

初期には結果の出しやすいPCの検索連動型広告がメインで採用されがちですが、運用型広告では検索以外でもたくさんのイノベーションが起きています。検索で試行錯誤している間にも、機会損失は起き続けています。検索以外の施策が検索より多くのリターンをもたらすことだって往々にしてあるのです。

一つの代理店と長く付き合い、最適化がある程度できていれば、代理店は関係性の維持のために必要以上に結果を追い求めることだけではなく、新しいことへのチャレンジに時間を割く余裕が生まれます。それを促すことが、長い目で見て広告主の利益につながっていくでしょう。


3)一度経験した失敗策も再度提案される

運用型広告にはいくつものアプローチの仕方がありますが、多くの場合、過去に失敗したアプローチを再度試すことは多くの場合失敗の数をもう一つ積み重ねるに等しい行為です。

ただし、仮に同じキーワードだったとしても、広告やランディングページ、サービス内容やタイミングが違えば結果はきっと変わります。一度失敗したからといって次もまた失敗するとは限らないのが運用型広告です。PDCAを前提としたモデルのプラットフォームでは、数多くのアプローチを試すことが結果的に最適化への近道になることが多いのもまた事実です。そのため、運用型広告が得意な代理店であればあるほど、既に過去に失敗した手法も含めて、数多くの提案を行わざるを得ません。

過去に失敗した手法でも、設計や工夫次第で有効な手法に変えられることはまれにあります。代理店を頻繁に変えず、失敗を受け入れたり、なぜそうなるのかをオープンに議論できる姿勢が広告主側にあれば、最終的にアカウントは効率化され、より多くの利益をもたらすことになるでしょう。


4)運用型広告は成果が出るまで時間が必要

大きなアカウントであればあるほど、この傾向は顕著になります。仮に、初期設計に自信があり過去に何度も偉大な成果を上げてきたコンサルタントだったとしても、非常に大きなアカウントで最初からアカウントのポテンシャルをすべて引き出すのは至難の業です。

運用を通じて分析の実績が蓄積され、新たな打ち手が見つかることはよくありますし、変化の激しい現在においては、以前成功した同じ施策が来年も通用するとは限りません。いい代理店ほど設計に時間をかけますし、安定して成果が出せるようになるまで数ヶ月かかることは覚悟する必要があるでしょう。


5)長い付き合いによって、代理店も業界やシーズナリティに詳しくなる

神は細部に宿ると言いますが、細部のちょっとした違いが結果に大きく影響するのが運用型広告です。業界特有の事情などは、広告や運用の細かいところに効いてきます。

非常にかんたんな例ですが、自転車のパーツを扱うショップで「安全な梱包で無料配送」という広告が他の広告より2倍近くコンバージョン率が良かった例があります。そこで、この広告文が勝ちパターンだとして他の広告グループ(バイク用のウェア)に適用したところ、さっぱり結果が出なかったことがありました。

考えてみれば当たり前ですが、パーツの配送に「破損がないように」と気を使う人はたくさんいても、ウェアの安全な配送を気にする人は稀です。後から聞けば「そんなこと当たり前じゃないか」と思うことでも、大規模なアカウントではなかなか気づくことが難しかったり、結果が出てみないと分からないことは案外多いものです。

代理店を頻繁に切り替えれば、このプロセスを繰り返すリスクが高まるということです。

 

それでも代理店を変えたくなったら

先ほどの記事の最後では、「よい結果を出すためには、広告主が代理店と協調し、代理店が仕事をしやすいようにサポートすることが大事」だと主張しています。言い換えれば、代理店は自分たちのマーケティングゴールを共有するチームの一員だと考えるということかもしれません。

とは言いつつも、様々な事情によって、残念ながら代理店を変える必要性に迫られる時があるかもしれません。

そこで、以下の記事で、代理店(主にSEM)を検討する際のポイントが完結にまとめられていましたので、ポイントだけ抄訳してこの記事を締めたいと思います。代理店変更はない方が幸せかもしれませんが、どうしてもという時は、ご参考下さい。


Considering an SEM Agency? How to Separate the Wheat from the Chaff
http://searchengineland.com/considering-an-sem-agency-how-to-separate-the-wheat-from-the-chaff-141748



よい代理店は強みを売りにし、悪い代理店は他代理店の弱みを列挙する

Good SEM Agencies Sell Their Strengths, Bad Agencies Point Out Others’ Weaknesses

よい代理店はSEMの運用工程があり、悪い代理店は担当者によってバラバラ

Good Agencies Have a Process for SEM Management, Bad Agencies Vary by Account Manager

よい代理店には透明性があり、悪い代理店は結果を隠したがる

Good SEM Agencies are Transparent, Bad Agencies Hide Results

よい代理店は結果を出し、悪い代理店は契約書を出す

Good SEM Agencies Keep Business Based on Results, Bad Agencies Keep Business Based on Contracts

よい代理店には得意分野があり、悪い代理店は八方美人

Good SEM Agencies Have A Sweet Spot, Bad Agencies Are All Things to All People

よい代理店は家族のように感じ、悪い代理店は可愛い娘のダメな彼氏

Good Agencies Make You Feel Like Family, Bad Agencies Make You Want to Hide Your Daughter


パブリッシャートレーディングデスクとは何か?

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パブリッシャー(メディア)の抱える課題

「アドテクノロジー」の文脈で語られる近年のディスプレイ広告の変革は、広告主や広告代理店、それらが利用するDSPなどのいわゆるデマンドサイドと呼ばれる購入側の進化を示すことが多いと思います。

RTB(リアル・タイム・ビッディング)と呼ばれるように、リアルタイムでインプレッションを取引し、パフォーマンスに合わせて運用が可能なプログラマティックバイイングは、それまで固定の CPM での取引が基本となっていたディスプレイ広告に消極的な態度を取ることが多かった、ダイレクトキャンペーンを重視する広告主を中心に広まることで、短期間で大きな市場を形成してきました。

一方で、ディスプレイ広告がパブリッシャー(メディア)の文脈で語られることは相対的に少ないように思います。

ブログやソーシャルメディアの一般化、ユーザー側のデバイスやネット接続環境の進化もあって、取引単位であるインプレッションを生み出すことは以前よりずいぶんと容易になりました。続々と生まれる個人や新鋭のメディアが RTB の恩恵を受けてカジュアルに収益化を進める一方で、伝統的なメディアでは取引の複雑化やインプレッション単価の下落を避けたい意図もあってか、デマンドサイドほどには RTB への対応が進んでいるとは言えない状況です。

どのようなメディアかにもよりますが、現状維持ではインプレッションの販売率は下がってしまう一方で、これまでの固定CPM の単価水準を維持できるサイトは少ないとなると、どういったバランスで広告ビジネスを推進していくべきなのか、経営判断を迫られているメディアは多いと思います。

2013年11月に行われた「Ad Operations Summit 2013」でモデレータを務めた Operative の CEO である Lorne Brown が、ディスカッションの冒頭で

"New competition is forcing publishers to create new business models"
新たな競争は、パブリッシャーに新たなビジネスモデルを要請している。

と発言したのも、デマンドサイドから加速した変化が、徐々にメディアに新しい事業モデルを生み出す機会とプレッシャーとを同時に与えているという状況を端的に表現していると思われます。


Publisher Trading Desk とは何か?

2013年頃から、Publisher Trading Desk(パブリッシャートレーディングデスク)という言葉を聞くようになりました。

通常、トレーディングデスクというとデマンドサイドで広告運用を行う組織を指すため、パブリッシャーが位置するサプライサイドに採用するには少し馴染みにくい言葉です。広告を掲載する役割であるパブリッシャーが広告運用を行うトレーディングデスクを持つ意味とは、一体何なのでしょうか。

2014年1月にポストされた Digiday の記事「The rise of the publisher trading desk (パブリッシャートレーディングデスクの台頭)」が、パブリッシャートレーディングデスクを捉える上で非常に参考になるので、いくつか引用してみたいと思います。


The rise of the publisher trading desk | Digiday
http://digiday.com/publishers/rise-publisher-trading-desk/

"Major publishers have accepted that programmatic advertising is here to stay, and most now sell significant portions of their ad space that way. Now a handful are taking their ad tech experiments a step further, using it to buy inventory from third-party sites and exchanges, repackage it and sell to their advertiser clients at a premium."

"今日では多くの大手パブリッシャーがプログラマティック・バイイングを受け入れており、RTBを通じて多くの広告在庫を販売するようになりました。そして、幾つかのパブリッシャーは、他社のサイトやエクスチェンジから広告在庫を買い取り再パッケージして販売するという方法で、アドテクノロジーの実験をもうワンステップ先へ進めようとしています。"
"Condé Nast, the Washington Post and the Guardian have all launched publisher trading desks in the past year. The idea is for those units to take information gleaned from owned and operated properties, and to use it to target users elsewhere on the Web on behalf of clients. An advertiser may wish to reach a specific publisher’s audience, for example, but care little if it actually does so on that publisher’s sites. That’s the opportunity publishers are hoping to exploit."

"コンデナスト、ワシントンポストやガーディアンは、いずれも2013年にパブリッシャートレーディングデスクを開始しました。これらはいずれも、自社メディアや配下にある関連サイト等から収集された情報を活用して、広告主に変わってユーザーをターゲティングするという意図で組織されています。例えば、広告主は特定のメディアが持つオーディエンスにリーチしたいと考えていますが、広告主は本当にそのサイトのオーディエンスかどうか一定の注意を払いながら出稿する必要があります。ここが、パブリッシャーのビジネスチャンスなのです。"
"“We use our first-party data to target ads both across our own sites, and across the outside market. It’s working very well,” said Alanna Gombert, general manager of Condé Nast’s CatalystDesk programmatic division. “We use our own buying platforms and do our own buying,” she added.""

「私たちは自社サイトとその外部の両方に対してターゲティングするために自社のファーストパーティデータを活用しています。上手くいっていますよ。」とコンデナストのトレーディングデスクである CatalystDesk で部長を務めるアランナ・ゴンベールは言います。「私たちは、専門のチームで専用のバイイング・プラットフォームを利用しています。」
"It’s clear, however, that publishers are now embracing ad tech more than ever and looking for ways to turn what many have perceived as a threat to their business models into something that can help unlock new revenue streams instead."

"パブリッシャーは明らかにこれまでよりアドテクノロジーと結びつきつつあり、これまでは脅威と考えていたアドテクノロジーをいかにして新たな収益源へと変えていくか、その方法を模索している段階です。"

図解で考える Publisher Trading Desk

上記の記事を読む限り、パブリッシャートレーディングデスクはこれまでデマンドサイドのデータを利用してターゲティングしていた広告を、より精緻な自社データ(と顧客理解)を持つパブリッシャーが、デマンドサイドとして広告主の運用を肩代わり(≒トレーディングデスク)することを指しているようです。データを単にアグリゲータに販売するのではなく、収益化のために一歩踏み込んで活用する組織とも言えるでしょう。

では、その組織は具体的にどのような商流で、どのように運用されているのか、以下の adexchanger の記事が分かりやすく例を挙げて説明していますので、抄訳と図解をしながら考えてみたいと思います。


How Publishers Can Beat Agencies In Trading-Desk Advertising
http://www.adexchanger.com/data-driven-thinking/how-publishers-can-beat-agencies-in-trading-desk-advertising/


架空のスポーツ系コンテンツのポータルサイト BigSports.com を事例として考えてみます。BigSports.com はコムスコアのスポーツカテゴリ上位の有名サイトです。有名サイトなので広告在庫はいつもプレミアム(純広)で販売しています。

ある時、大手広告主が「バスケ好きなユーザー」をターゲットに100万ドル分の出稿を検討しています。しかしながら BigSports.com にはバスケカテゴリの広告在庫が80万ドル分しかありません。仕方ないので広告主は80万ドル分で BigSports.com 内のバスケセグメントの在庫を買い占め、残りの20万ドル分はエージェンシートレーディングデスクに依頼して RTB を通じて他サイトの在庫を購入することになりました。

なお、その際にバスケセグメントのユーザーやそれに類似したユーザーを見つけるため、DMP(例:MediaMath)を利用することになります。

その時の状況を図にすると以下のようになります。(図はadmarketech.作成)



しかしながら、BigSports.com はコムスコアの上位サイトなので、他のサイトよりも詳細にバスケ好きのユーザーの情報を持っているはずです。例えば、これまでのキャンペーンデータや、自社サイトのアクセスデータ、そして広告を通じて広告主サイトへのアクセスしたデータなどです。

さらに、コンテンツも広告も配信しているわけなので、どういったコンテンツとクリエイティブの組み合わせが相性がいいのかといった情報の蓄積もありますし、BigSports.com の記事は同じようなテーマの別のサイトにも配信されていますので、他のサイトを見ている同じ興味を持ったユーザーにもリーチすることができます。

そうなると、BigSports.com 自体がトレーディングデスクを開設し、広告主のためにリーチを拡大する仕事を担ってもいいのではないでしょうか。その場合、以下のような図になると思います。



この図では、濃い青色の部分が新たにパブリッシャーに追加された機能です。サプライサイドとデマンドサイドの垣根が曖昧になっています。今回の「バスケ好きなユーザー」のように、収益化が可能にも関わらず広告在庫が頻繁に不足するような場合、パブリッシャーは DMP をインストールし、広告主の残りの20万ドルを収益化するためにトレーディングデスクの人材を雇う方が賢明かもしれません。

広告主は、特定のオーディエンスに対して深い理解を持ち、プレミアムコンテンツの生みの親でもあり、精度の高いファーストパーティデータを保有するパブリッシャーをより信用するようになるでしょう。


DMP とオーディエンス拡張技術がカギ

パブリッシャートレーディングデスクというビジネス形態を採用する上で、DMP の採用はほぼ必要条件になります。

濃いセグメントを持つバーティカルサイトのような、セグメントがはっきりしているサイトであればあるほどファーストパーティデータの価値は高いとされるため、広告在庫を外部から調達する上で、そのデータを利用したオーディエンス拡張がパブリッシャートレーディングデスクの成功のカギを握っています。DMP と接続する DSP にとっても、パブリッシャーDMP はまたとない収益化の機会でもあります。

オーディエンス拡張の重要性については、以下のAdMonsters の記事でも言及されています。


Publisher Audience Extension: Old Concept New Players | AdMonsters
http://www.admonsters.com/blog/publisher-audience-extension-part2

"As audience extension basically turns publishers into media buyers, DSPs actually make sense as a partner with great experience in targeted ad buying. "
"オーディエンス拡張は、パブリッシャーをメディアバイヤーに変えます。DSPは(これまでの入札-応札の関係から)ターゲティング広告の購入経験が豊富なパートナーとなります。"


パブリッシャートレーディングデスクの強みは、精度の高いファーストパーティデータと、そのデータから拡張された類似オーディエンスの精度の高さによって、成果を返しやすい広告在庫を柔軟に確保できるということではないでしょうか。今後は、パブリッシャーサイドでもデータ収集と管理を担う役目として DMP の導入と、それを適切に運用する重要性(および人材の採用)がより増してくると考えられます。

パブリッシャートレーディングデスクは、アドテクノロジーの進化によって可能になったメディアの新たなビジネスモデルとして注目されています。エッジが立ったバーティカルメディアであればあるほど、今後のビジネス開発の機会は増えていくでしょう。

2014年は日本でもパブリッシャートレーディングデスクを採用する事例が増えてくると考えられます。メディアビジネスの変化の萌芽であるこの動き、引き続きウォッチしていきたいと思います!

2014年4月のAdWords機能強化を考える

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AdWordsの機能強化

以前からアナウンスされていた AdWords のメジャーアップデートが 2014年4月22日(日本時間だと4月23日未明)に発表されました。


Inside AdWords: Sharing the latest AdWords innovations
http://adwords.blogspot.jp/2014/04/sharing-latest-adwords-innovations.html



YouTubeで発表の様子を見ることができます


アナウンスの内容は、即座にSEM系のメディアでカバレッジされました。以下のSearch Engine Land の記事が簡潔にまとまっています。

参考:Google's "Step Inside AdWords" News: Features For App Ads, More UI Tools, No Wild Surprises

上記の記事は、以下の滝井さんのブログでも詳細に解説されています。

参考:Googleアドワーズ大型(?)補強の新機能10個発表。“Step Inside AdWords” | 滝井秀典ブログ

これらの記事を拝見すると、事前の騒がれていた憶測よりはやや落ち着いた内容で、エンハンストキャンペーンの時のような Mandatory(強制的)な変更ではなく、ほぼすべての機能がオプションとして追加利用するかたちになっています。


アプリ広告(App Ads)とマルチスクリーンの強化

今回の変更は大きく分けて「マルチスクリーン(特にモバイル)対応の強化」と、「管理機能の強化」の2つに分けて紹介されました。


最初に発表されたのは、アプリ広告(App Ads)です。

Google のアプリ向け広告はもともと AdMob などがありますが、今回の機能強化では、大きく以下の4つが発表されています。

ターゲティングの強化
ユーザーが既に使っている/インストールしているアプリの種類に応じてターゲティングしたり、アプリの利用頻度やダウンロード履歴も考慮するようになるようです。

エンゲージメントの強化
80%のアプリは一度使われた後削除されてしまうそうで、既にインストールしているアプリの利用頻度を上げてもらうためのプッシュ型アプローチが広告でできるようになります。発表ではこれを「アプリのディープリンク(app deep linking)」という表現で伝えていました。

アプリ広告の表示増加
アプリのプッシュ型アプローチは YouTube(モバイル)などでも展開されるので、表示回数は増えるだろうとのことです。

アプリ計測の強化
アプリのコンバージョントラッキングが強化され、インストールされてからの利用有無や、アプリ内購入なども計測できるようになるとのこと。


以前は、アプリの Apple、ブラウザの Google などと言われた時期もありましたが、今回の発表で、アプリも含めて、マルチスクリーンで必要なものはすべてカバーしにいくという気概が感じられます。ただ、エンゲージメントの強化はリターゲティング広告でもよく議論されるような気持ち悪さを感じる利用者も出てくるかもしれません。


アプリ広告と併せて発表されたのが、推定合計コンバージョンの強化です。これには詳細がありませんでしたが、クロスデバイス集計の精度や観測範囲を強化することで、マルチスクリーン(特にモバイル)への対応を強く打ち出していくという意思表明だと思います。エンハンストキャンペーンの思想をさらに裏付ける機能改善ですね。

Google の事情からしても、トラフィックのモバイル比率が上がり、平均の RPM(CPC)が落ちてきているので、広告出稿側と実際のユーザー利用、広告枠の需給バランス是正のためにも広告主のモバイル参加を強く促したい意向もあると考えられます。


レポートを含めた管理機能の強化

もう一つは、レポートを含めた管理面の強化です。バルク設定、自動入札、レポート強化、ドラフトモードなどが発表されており、特にバルク設定とレポート強化はAdWords 依存度の高い欧米の大部分の広告主には歓迎される機能だと思います。


レポーティングの強化
レポートのビジュアライゼーションツールが実装されます。ドラッグアンドドロップでレポートを柔軟に作れるようになるようです。アドワーズ上でエクセルが使えるようなイメージかと思います。ダウンロードしたCSVをエクセル上で加工するのではなく、管理画面上で完結させてしまおうというアプローチですね。

バルク編集機能の強化
これまでも共有ライブラリの機能がありましたが、AdWords Editor のように多くの一括編集が管理画面上で行うことができるようになるようです。

自動入札ツール
これまでもターゲットCPAなどの自動入札モードはありましたが、コンバージョンの最大化やROASの最大化を目的とした自動入札機能が追加になります。推定合計コンバージョンの強化とも連動する機能ですね。

ドラフトモード
これまでのキャンペーンエクスペリメント(ACE:テスト機能)を改変して、「ドラフトモード」になるようです。「Lab(実験室)」という伝え方をしているように、ある変更によってどのように実績が変わるのか、仮説検証をして判断できるようにするとのこと。


これらの一連の変更は、今回の発表では「Enterprise-Class」という形容がされています。

この記事では、
Remember: Google Is Your Friend (Unless You’re Kenshoo Or Marin)
Googleはあなたの友人だ(あなたがKenshooかMarinじゃなければね)

とあるように、わざわざ「Enterprise-Class」と銘打つあたりが、他のプラットフォームやサードパーティツールにどう聞こえるのか、興味深いところではありますね。

今回発表のあったこれらの変更は、2014年4月から数ヶ月間の間に実装されるそうです。引き続き続報があれば取り上げていきたいと思います!

State of AdOps #10:テクノロジーが、パブリッシャーの武器になる −プラットフォーム・ワン 田辺雄樹氏

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「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

※過去の記事はこちらから。

第10回目は、DSP(MarketOne®)、DMP(AudienceOne®)、SSP(YIELD ONE®)など、プログラマティックに関わるプラットフォームを一元的に導入、推進しているプラットフォーム・ワンで執行役員を務められている田辺雄樹(たべ ゆうき)さんに、パブリッシャーサイドでの広告運用やマネタイズの現状について、忌憚のないお話をお聞きしました。


# インタビューは 2014年3月某日に行われました。



サプライサイドの広告運用、3つの機能。


●まずは、田辺さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

新卒ではシンクタンクである日本総合研究所に入り、製造業向け基幹システムの導入コンサルティングや、プロジェクトマネジメントを行っていました。いくつかのプロジェクトを経験する中で、誰かのサービスではなく、自分たちが作ったサービスを広めていきたいという思いが強くなり、ご縁があって2007年に DAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)に転職しました。

当時は、現在の MarketOne® の前身である「アドマーケットプレイス」構想が出ていた時期で、タイミング良くその開発に携わるようになり、2009年にリリースされるまで製品がゼロから産まれていくさまを経験することができました。

その後、2011年より、DAC のアドプラットフォーム事業開発会社であるプラットフォーム・ワンに出向し、プラットフォーム推進統括マネージャーとして、MarketOne® だけでなく SSP の YIELD ONE® を含めた両サービスの運営・事業開発を担当しています。



●デマンドサイドとサプライサイド、両方を経験したことがある人は少ないですよね。

そうかもしれません。メディア企業以外で双方を扱う企業が少ないですし、マーケットの仕組みを理解する上で得難い経験だと思っています。取引を媒介するプラットフォームとして、双方のお客様の利益をどうやったら最大化できるのかを日々考えています。



●アドテクノロジーというとデマンドサイドの視点が多いですが、SSPという視点から見て、現在の運用型広告市場はどう見えていますか?

近年の DSP、RTB などの環境が整ってきた中で、デマンドサイドでの広告運用の重要性は十分に認識されてきていると思いますが、サプライサイドから見ると、デマンドサイドほどには運用という観点で語られることはないように思います。

広告運用という軸でお話すると、サプライサイドでは3つの機能があると考えています。

1つ目はアドサーバーです。ディスプレイ広告のビジネスの基本は広告商品開発、乱暴に言ってしまえば枠づくりですので、純広告であれば予約されたインプレッションをアドサーバーでしっかり管理し、ルールにのっとって正しく確実に広告を配信するというのが「運用」でした。「管理・保守」の意味合いに近い運用です。

その場合、運用で注視するポイントは、収益管理の前提となる配信のスケジューリングです。曜日や一日の中でのピークタイムなど、自社のコンテンツの表示回数の波を捉えながら、広告インプレッションを適切に配信するという役割ですね。

2つ目はサプライサイドプラットフォーム(SSP)です。2000年代後半に、レムナントと呼ばれるような純広告としては取り扱いにくいインプレッションを収益化するためにアドネットワークが出現し、イールドマネジメントという概念がだんだん浸透するようになりましたが、SSP とは、アドサーバーが管理する純広告やアドネットワークなど、さまざまな経路から行われる広告取引を仲介してメディアの収益性を高めるためにイールドマネジメントを担う機能になります。

3つ目はパブリッシャートレーディングデスク(PTD)です。メディアの持つトラフィックのデータというのは非常に資産価値が高く、かつセンシティブなデータですから、それを単純に DMP に預けるのではなく、プライベートDMP を構築して自らそのデータを活用し、クライアントの与件を達成するために DSP などを運用していく機能です。

すべてのパブリッシャーが PTD に向いているわけではないかもしれませんが、デマンドサイドで言われる「広告運用」と非常に近い意味の運用が、パブリッシャーでも少しづつですが始まっているのではないかと思います。


「プログラマティック」の4段階


●今挙げていただいた3つのうち、特に2番目の SSP は多くのパブリッシャーに導入されています。SSP の運用について詳しく教えて下さい。

SSP の運用を考える前に、「プログラマティック(Programmatic)」という概念について改めて整理する必要がありますので、少し説明させて下さい。

下の図は MAGNA GLOBAL が出した調査資料を元に eMarketer が2013年の10月に発表したグラフですが、赤丸で囲った部分を見ていただくと、2013年にアメリカの RTB の市場規模は33億ドル強($3.32B)だと推計されています。

参考:Programmatic Ad Spend Set to Soar - eMarketer (http://www.emarketer.com/Article/Programmatic-Ad-Spend-Set-Soar/1010343)


一方で、同資料の別の図を見てみると、アメリカのプログラマティックディスプレイ(Programmatic Display Ad)の市場規模は75億ドル($7.5B)になり、RTB の市場規模の2倍以上になります。


つまり、一般に RTB と Programmatic は混同されがちですが、上の図の注釈(赤い下線部)に「includes both RTB and other programmatic/automated platforms」とわざわざ分けて記載してあることからも、RTB と Programmatic は似て非なる概念だということが分かります。



●その流れで質問しますが、RTB と Programmatic の具体的な違いは何でしょうか?

Programmatic は、RTB を内包する概念ととらまえています。その範囲は、パブリッシャーのディスプレイ広告取引から見た時、RTB をはじめアドネットワークや時にアフィリエイトで広告枠が埋められる中で、配信される広告がデマンドサイドのデータを活用したターゲティングなど、なんらかの論理を以って取引が制御・自動化される状態を指します。つまり日本市場で言うところの純広告取引以外のすべてが Programmatic と言えるのではないでしょうか。

その Programmatic ですが、取引のやり方として4種類、IAB が定義しています。下の図は、その定義をプラットフォーム・ワンが日本語訳したものの抜粋です。具体的には パブリッシャーから見た Programmatic は以下の4つに分けられます。

(クリックで拡大)

参考:
Programmatic and RTB
プログラマティックと自動取引 -媒体社の視点から


順番に見ていきますと、一番下は「オープン制オークション取引(Open Auction)」と呼ばれるものです。レムナントをリアルタイムで販売する、これがいわゆる狭義の RTB ですね。SSP の視点では、最低販売許容価格(フロアプライス)を設定して、それ以上の価格の入札に対してオークション形式でインプレッションを販売します。オークション形式なのでインプレッション保証はなく、接続されている DSP やアドネットワークと複数繋がっていることからも、オープンな取引形態と言えます。

その次が「招待制オークション取引(Invitation Only Auction)」です。仕組み自体は前述の Open Auction と同じですが、特定の広告主や広告代理店にだけ入札を許可するような、クローズドの形式です。リアルタイムで取引することは一緒ですが、取引先が限定されるため「プライベートマーケットプレイス」や「プライベートオークション」などと呼ばれます。

次に「余剰在庫型固定単価取引(Unreserved Fixed Rate)」です。あるパブリッシャーのある枠のインプレッションを、特定の広告主や広告代理店に対して販売する形式です。Invitation Only Auction との違いは、取引が1対1であるため、オークションではなくあらかじめ決められた価格によって取引される点です。固定CPM がいくらと決めて、優先的に取引する形態ですね。

最後が、一番上の「在庫予約型固定単価取引(Automated Guaranteed)」です。純広告に非常に近い形態です。Unreserved Fixed Rate との違いは、Guaranteed(保証) という言葉のとおり、予約型の取引なので、インプレッションが保証されている点です。「プログラマティックプレミアム」や「プログラマティックダイレクト」などとも呼ばれ、取引形態としては純広告に非常によく似ていますが、「手売り」と表現されるような取引に関わる様々な作業をシステムによって自動化するところが従来の純広告との違いです。

この4つの定義によってプログラマティック取引のグラデーションが表現されています。まとめると、プログラマティックとは、一番下の RTB (Open Auction) も含めた、プログラム化された様々な広告取引を包括する概念だと言えると思います。

ちなみに、先日共同でリリースさせて頂いた日本マイクロソフト様向けの取組み(※PDF:http://www.platform-one.co.jp/pdf/release_20140313.pdf)は、4つの定義の中の上2つ「余剰在庫型固定単価取引(Unreserved Fixed Rate)」と「在庫予約型固定単価取引(Automated Guaranteed)」と DMP とを活用して進めた事例となっており、他の広告主様でのご活用も増え始めてきています。


パブリッシャーサイドの広告運用としての SSP


●最初の質問に戻ると、プログラマティック取引の中で SSP の運用はどのような位置を占めるのでしょうか?

SSP は、これまでお話ししたプログラマティック取引のすべてを対象にできるプロダクトであるべき、と考えています。純広告以外の取引を管理し、収益の最大化を目的としますので、ただ単に「RTB取引できます」といったネットワークやアドサーバーのことを指すわけではありません。

個人的には、SSP とは「パブリッシャーのマネタイズを最大化し、業務効率改善を支援する業務・収益管理運用ツール」だと考えています。だからこそ、SSP はその名のとおりサプライサイドのプラットフォームとして、プログラマティック取引を一元的に管理する役割を担う必要があります。

ですので、媒体社様のご都合があることは理解しながらも、アドサーバーで優先順位をつけて SSP を数珠つなぎにし、フロアプライスごとに切っていくというような運用(メディエーション)がベストだとは思っていません。私は「Programmatic for Publisher」と言っていますが、サプライサイドのプラットフォームは、1つのインプレッション毎に入札される DSP やアドエクスチェンジ、アドネットワーク、プレミアムなどを一律に評価する体制を整えることで、レムナントの RPM の向上だけでなく、プレミアム広告のブランドセーフティ、保証型のインプレッションの管理など、プログラマティック取引を統合的に行える機能として位置すべき、と考えています。

図にすると、SSPの役割は最低限、この赤で囲った部分になると思います。




●そういった先進的なイールドオプティマイズを行っている企業はどれくらい存在しているのでしょうか?

2014年初頭の時点では、今申し上げたような SSP を使った統合的なイールドオプティマイゼーションを行っているパブリッシャーはまだ少ないと思います。また、スケジュール型の純広告は純広告として最優先で配信し、レムナントはレムナントとして運用するという体制が当然かと思います。

RTB のみならず、プログラマティックへのホリスティックな対応は、今後避けられない流れだと思います。パブリッシャーでの広告運用は、これまでの保守としての意味合いから、インプレッションのマネタイズ構造の変化に合わせてメディア企業内での組織運営の変化に至るまで、今までより広く重要な機能へと変わっていっているように思います。



●一方で、ドラスティックに変化することが難しい場合も多いと思います。

ですので、段階を追って変化する必要があると思います。これも IAB の資料になってしまうのですが、パブリッシャーがプログラマティックに対応するための段階を示した図があります。


参考(PDF):http://www.iab.net/media/file/IABDigitalSimplifiedProgrammaticSalesCapability.pdf


この図ではプログラマティック対応を3段階に分けて提示しています。

1. は、「Operation Focused (運用にフォーカスせよ)」です。パブリッシャーにおける広告運用とは何か、プログラマティック取引では何が求められるのかを知ろうということですね。このビジネスモデルをまずは理解しようということです。

2. は、「Developing Internal Sales Capabilities(社内組織を立ち上げよ)」です。ビジネスモデルの次に、プログラマティック取引に対応する組織を立ち上げ、社内的なコンフリクトがない組織体制にしていくという段階です。純広告で収益をあげていた歴史のあるメディアでは、社内的に純広告営業とプログラマティックで組織が分かれていて部門間で対立が起こっていることがあります。それはやめましょうということですね。

3. は、「Internal Consultants for Programmatic(社内のコンサルタントになれ)」です。プログラマティック取引の担当者が社内のあらゆる広告メニューのハブ的役割を担うようになるということです。プログラマティックはプログラマティック・ダイレクトなどの純広告的な取引も含む概念なので、広告営業担当とチームを組んで、プログラマティックに対応した広告パッケージを作るなど、オペレーションを前提にした広告在庫をいかにデマンドサイドにとって価値あるものにパッケージしていくか、営業組織が一丸となって動ける体制をつくり、その中心になりましょうということです。



●そうなると、そういった役割が担える人材や組織の問題にもつながっていきますね。

そう思います。先ほどの3段階の図で言えば、1の段階の企業は多いものの、2や3の段階にいる企業はまだ少ないです。それがダメだという意味ではなくて、まずは1の段階でアドサーバーの保守だけではない、RPM を上げるための運用を行って知見をためていく必要があると思います。

メディアの特性によってパブリッシャーサイドの広告運用の最適解は変わるはずです。例えば、単純に高単価で約定するネットワークを優先しても、フィルレートが低ければマネタイズできるインプレッションは増えませんから全体の RPM は上がりません。オークションを活発にするためにどのように SSP の設定を変えていけばいいのか、オーディエンスや枠ごとにフロアプライスを切り替えたらどう収益が変化するのかなど、データをためていきながらそのメディアなりやり方を見つけていくことが、結果的に次の段階に進むドライバーになるのだと思います。

そして、それを実際に現場で担える人材をどう確保し、組織として伸ばしていくかが今後の課題かもしれません。



●デマンドサイドの課題ともつながっていきますね。

立場は違えど、構造としては似ているのかもしれません。テクノロジーの進化によってパブリッシャーにとっての武器はだんだん揃ってきていると思います。それをどう活用するのかはパブリッシャー次第といいますか。

SSP の選び方や設計の仕方、動画や広告サイズの変更などのフォーマットの拡大もありますし、需要に合わせて広告商品の開発をすることにもつながっていくかもしれません。メディアの特性に合わせてビジネスが変化していくなかで、その中心に広告運用者の価値があると思いますし、パブリッシャーこそテクノロジーを活用すべきだと思います。

プラットフォーム・ワンとしては、パートナーとして選ばれるよう、それらをきっちりフォローさせて頂ければと考えております。


YIELD ONE® が担っていく役割


●ありがとうございます。そのような流れの中で、YIELD ONE® としての方向性などがあればぜひ。

「YIELD ONE®」のポジショニングとしては、パブリッシャーと伴走するイールドオプティマイズプラットフォームです。下の図で表現すると、縦軸にイールドマネジメントとエクスチェンジ、横軸にプレミアムか否かで四象限を作ると、現状お付き合いさせて頂いているシェアの大半が法人優良媒体社様であることもあって、我々は右上に位置し、特にイールドマネジメント機能を提供するサービスに位置付けている、と考えています。

SSP と一言で言ってもイールドマネジメントとエクスチェンジャーがあると思っていまして、単純にレムナントをまとめてバルクでお金に変えるという機能ではなく、パブリッシャーに向き合いながらイールドマネジメント機能を提供していくのが SSP の本来の役割です。そこはブレないようにしていきます。



話しは少し逸れますが、おそらく、ちょうどこのインタビューがオープンになる頃にはDACから新たなリリース(http://www.dac.co.jp/press/2014/flexone.html)を発表できていると思います。その内容は、ここまでお話しさせて頂いたようなレムナント領域に限ったプログラマティック取引のフルサポートをするのみならず、媒体社様にとっての手売り、即ち純広告の配信領域まで含めたイールドオプティマイゼーションをフルサポートするプロダクトに関連するものです。名前は、FlexOne®と言います。ここまででも触れた4段階の「プログラマティック」に純広告の領域まで含め、媒体社様にとってのイールドオプティマイゼーションを、ワンストップで実現できるよう尽力していく次第です。

こういったリリースや日々の活動を通じて、狭義の RTB のみならず、プライベートエクスチェンジサービスなど、パブリッシャー向けのプログラマティック取引プラットフォームとして、高単価で収益性の高い広告販売ができる環境を提供し続けていきたいと考えています。

手前味噌ですが、2014年の1月に発表したリリースでは、2013年10月~12月の3ヶ月間における RTB平均取引単価が前年同期比で約55%向上するなど、結果も明らかに目に見える形で出てきていますので、引き続きプログラマティックの環境を整備し、デマンドサイド・サプライサイド双方の収益が向上するよう支援していきたいと思います。

(PDF)プラットフォーム・ワンの SSP「YIELD ONE®」の媒体社収益は 前年比 55%アップ、DSP「MarketOne®」の取引単価はステイ


●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


プラットフォーム・ワン (http://www.platform-one.co.jp/)


広告運用にこれから携わる人への 17 のアドバイス

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業務の範囲が拡大していく広告運用という仕事

「広告運用」という業務が単に広告を入稿・配信・レポートするだけの範囲に留まらないことは、現場で仕事をしている運用者の方が一番身に沁みて理解されていると思います。そういった認識は、近年の運用型広告の市場の伸びと、それに連動したメディアの収益構造の変化によって、徐々に経営層にも徐々に広がってきているのかもしれません。

例えば、IAB が主催している広告運用を対象としたイベント「Ad Operations Summit 2013」で最も注目を集めたセッションの一つが「The New Age of Ad Operations (広告運用の新時代)」でした。IABのサイトに当日のハイライトが書かれています。

"The New Age of Ad Operations
Kelly Roark, Vice President, Interactive Sales and Business Development, Scripps Network, discussed the idea that ad ops is now “all ops”—all-encompassing and about much more than implementation. Ad ops teams should be driving the direction of their companies. She also noted the need to keep talent engaged by cross-training and helping them see and understand their role in the big picture."


Scripps Network のインタラクティブセールス・ビジネス開発部門の副社長である Kelly Roark は、広告運用という仕事はもはや「全運用」(本来の実行部隊という業務を超えて、あらゆるものが業務の対象になっている)だという議論を展開した。広告運用のチームは会社を引っ張っていく存在であるべきで、だからこそ部門を超えた研修や大局的な視野をもってもらうように盛りたてる必要があると指摘した。
参考:IAB Ad Operations Summit 2013 Highlights


このサマリーを読む限り、Scripps Network のようなメディア企業において、広告運用は非常に重要な業務として認識されていることが分かります。

以前書いた「Ad Ops Summit 2013 から学ぶ広告運用に必要なこと」にも引用した、Ad Operations Summit 当日の以下の発言も、上記のサマリーを裏付けています。

"The ad operations role has evolved tremendously. Simply among those who took part in the session, we generated a list of 20 responsibilities that now fall onto ad ops. It’s no longer just about doing QA, inventory management, trafficking, reporting and, campaign management. Ad ops now has direct responsibility for technology, vendor management, creative and developers, yield management, programmatic, block lists and change management around new sales structures, ad technology and processes."

広告運用という役割は途方もない発展を遂げました。この間のセッションに参加したメンバーで数えただけでも20ほどの広告運用の職責を挙げることができます。広告運用はもはやQA(品質保証)、在庫管理、広告配信、レポートやキャンペーンマネジメントだけに留まらず、テクノロジーそのもの、ベンダーマネジメント、クリエイティブや開発、イールドマネジメント、プログラマティック、ブロックリストの作成や営業の組織編成、プロセス管理などあらゆる分野に直接的な責任を負っています。
参考: The New Age of Ad Ops | The Op-Ed


Scripps Network のようなメディア企業の多くで、デマンドサイドとサプライサイド両方の業務が発生しています。特にイールドマネジメントはメディアの収益性に直結することから、デマンドサイドが想像する以上に運用チームに多くの業務が発生しているはずです。上記の発言は、ここ数年で加速しつつあるメディアの収益構造の変化が、メディア企業の組織構造にまで直接的に影響を及ぼしていることを示唆しています。

また、少し前のものですが、The Op-Ed が 2012年Q4(10−12月)の広告運用の実態についての調査でも、既に同様の結果が指摘されています。


参考:Poll Results: Q4’s Impact on Ad Ops Professionals | The Op-Ed

"An overwhelming majority of respondents told us that their ad ops team brings more value than just strictly trafficking. This is especially important in today’s ad ops environment, where a blending of ad ops and sales is more commonplace due to the rising emphasis on RTB and technology based ad sales."

大多数の回答者が、広告運用のチームは単なる配信業務を超えた価値をもたらしてくれていると回答しています。これは、RTB の伸長やテクノロジーを前提とした広告営業などによって運用と営業のブレンドが当たり前になってきた現在の広告運用の環境において、特に重要な事実です。

年々キャッチアップが大変になっていく

カバーする範囲が広がり、重要さが増していくに従って、あとから業務をキャッチアップするのは一般的には困難になります。

先ほどの The Op-Ed の調査でも、「自社の広告運用チームは十分に教育され、新しいテクノロジーやプラットフォームについていけているか?」という設問には、半数以上にあたる53.3% が「そうではない」と回答しています。デジタル領域のトレーニングと採用は近年かなり大きなイシューとなってきており、日本でも苦労している企業が多いのではないでしょうか。


参考:Poll Results: Q4’s Impact on Ad Ops Professionals | The Op-Ed


大きな企業であれば分業化が進んでいる一方、 Kelly Roark が指摘するような経営の根幹にまで関わる社員を育てることとのバランスは取りづらくなります。アウトソーシングを推進した結果、実務が分からないまま競争力を失ってしまうことも懸念です。

現場の社員からみても、トレーニングやキャリアデベロップメントはとても気になる問題です。広告運用の仕事の平均勤続期間は15ヶ月(Ad operations employees have an average shelf life of about 15 months per hire)とも言われていることから考えても、決して楽な仕事ではありません。特に未経験でこの分野に入ってきた方にとっては、飛び交う言葉が難解すぎて、どうしていいか分からないことが多々あるのではないでしょうか。


あるインターンに向けた、17のアドバイス

未経験の人材をどのようにプロフェッショナルにしていくかという課題と、新しい成長産業の中でどのように自らの価値を発揮していくかという問題は、経営側と従業員側の視点の違いだけで、共通の問題だと言えます。

OJT中心に実践で慣れていく企業もあれば、細かなワークフローを策定して品質管理を重視する企業もあります。どのような方法で進めるにせよ、習熟のための近道は「ゲームのルールを理解する」ことにあるのかもしれません。

IPG の一員である メディアエージェンシーの UM(Universal McCann)で広告運用担当役員を務める Mitchell Weinstein さんが、「Advice For An Ad Ops Intern(ある広告運用のインターンに向けたアドバイス)」というタイトルで、17のアドバイスを公開してくれています。これから入ってくるインターンのために、あらかじめ「こういうことを伝えよう」と書いたものです。1年前の記事ですが、とてもよい内容だったので抄訳します。


出典:Advice For An Ad Ops Intern

インターンの彼に会ったら、「Lay of the land(状況を理解する)」という話をしたいと思う。私は通常、新入社員には我々の業界がどうなっているのかという概要を伝え、全体像を理解してもらうように努めている。人は、自分が何のためにこの仕事をしていて、自分の仕事が企業の目的にどのように沿っているのかを理解したときに、よりよいパフォーマンスを発揮できるというのが私の信念だからだ。背景を理解することが大事なんだ。

それをシンプルに理解してもらうために、インターンの彼に伝えることを以下の17のリストにまとめてみた。


1. 広告代理店には2つある。広告を作る代理店と、その広告をしかるべき場所へ設置する代理店で、我々は後者だ。


2. 我々はフルサービスの代理店だ。TV放送、紙媒体、デジタル、OOH、メディア戦略など、非常に広範囲のサービスを提供する。これらの中で(今回のインターンで)注力するのは、デジタルだ。


3. UMは素晴らしい場所だ。君がここで受ける教育は、今後のキャリアにとってかけがえのないものになるだろう。ここにいることが幸運で、さらに言うとアドテクの最前線であるデジタルのチームに参加できることは非常に幸運なんだということを知ってほしい。


4. 我々のチームの仕事は、プランニングされたメディアを確保し、設計通りに確実に実行することだ。かんたんに聞こえるかもしれないが、これはとても難しいことなんだ。


5. 我々のチームの仕事は、クライアントにとって新しくて効果的なテクノロジーを探し当て、どれが適切なのか評価することでもある。これは非常に困難であると同時に、楽しくやりがいのある仕事なんだ。


6. 大事なことは、自分のすべての仕事に細心の注意を払うことだ。小さな違いが、キャンペーンの成功に大きなインパクトをもたらしうるからね。


7. 代理店の組織構成で混乱することがあると思う。大きな代理店の多くはたくさんの部門を抱えていて、それぞれの関係はとても複雑だ。だいたいの概要は初めに伝えるが、現時点で気に病む必要はない。どこかで組織がガラッと変わることだってある。


8. 我々はメディアパートナーから広告を仕入れている。メディアパートナーは、パブリッシャー、ベンダー、セルサイド、サプライサイドなどとも呼ばれる。どれも互換性のある言葉だから、同義語だと思ってもらっていい。


9. メディアパートナーには3種類ある。1)自社の保有媒体として運営しているもの 2)多くのサイトから広告在庫を仕入れてまとめているもの 3)アドエクスチェンジを通じて配信できるもの それぞれ重なる部分があるが、それぞれの違いはとても重要だ。


10. デジタルメディアは第三者から広告が配信される。広義の第三者配信にはたくさんのメリットがあって、効果や効率を増加させることができる。このコンセプトを理解するためにたくさんの時間を費やす必要があるが、まずはメリットがあるという事実を押さえておいてくれ。


11. これからきっとたくさんのバズワードや三文字略語を聞くことになるだろう。プログラマティックとかプライベートエクスチェンジ、RTB や DSP、DMP や ATD などだ。この業界の人はみんな話すのが早いし、一日中こういった単語で話している。でも驚く必要はないし、全部覚える必要はない。まずは目の前の仕事に集中しよう。


12. いくつかのカンファレンスに出てみよう。ただ、事前にどれに行くかは話して決めよう。とにかくたくさんのイベントがあるから、大切な時間を有効に使うために、適切なイベントを選択しよう。


13. この代理店にはたくさんの優秀な人がいる。ここで働いている間に、できる限りたくさんの人に会ってほしい。


14. いろんな人が売り込みに来る。いい営業からは多くのことが学べる。彼らのプレゼンを注意深く聞いて、質問してみよう。その製品の本質を考え、クライアントにメリットがあるかどうか判断しよう。すべての製品がクライアントにフィットするわけではないが、すべてのミーティングは君の知識を増やすためのいい機会となるだろう。


15. ランチに連れて行ってくれたり、何かをくれた人には必ず御礼を言おう。君がその御礼に何かをする必要はない。ただ感謝を表現すればいい。


16. 我々は Google や Facebook、Hulu、Twitter などを始めとして、たくさんのクールな企業と仕事をしている。最初は楽しいし、興奮すると思う。でも、インターンを進めていくにしたがって、彼らよりも、まだ誰も聞いたことがないような企業との仕事に一層の興奮を覚えるはずだ。(それが次の Google かもしれないしね!)


17. あとは、AdExchanger を毎日読むことだね。


※フォントサイズや太字はadmarketech.による編集です


このアドバイスは、広告運用に限らず、多くの仕事に共通して適用できる知恵が含まれている素晴らしいアドバイスだと思います。そして、現場を熟知しているからこそ出てくる言葉(「小さな違いが、キャンペーンの成功に大きなインパクトをもたらしうる」とか!)には、耳を傾けざるをえない信頼感があります。

Mitchell さんのような素晴らしい上司や先輩があなたの職場にもきっといると思います。これからのキャリアでたくさんの素晴らしい出会いがありますように。

AdWordsの品質スコアの説明資料についての解説

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品質スコアの詳細な説明資料

洋の東西を問わず、リスティング広告に関わる人にとって AdWords の品質スコアは気になるトピックの一つです。

2013年7月末に発表された品質スコアの表示変更や、3ヶ月後の10月に発表された、広告ランクの算出に広告表示オプションを考慮するというアナウンスでも、実際の品質スコアの計算には変更がないにも関わらず、「品質スコアが変わった?」といった類の記事や問い合わせが多かったようです。表示変更についてはブログで再説明をして事態を収拾したこともありました。

そういった昨年秋からの状況を踏まえてか、Google は先日(2014年6月)、「More Insights about Quality Score and the AdWords Auction(品質スコアとアドワーズのオークションについての洞察)」というタイトルで、品質スコアに関する説明資料を公開しました。チーフエコノミストの Hal Varian氏自らポストしています。


リンク:
Inside AdWords: More Insights about Quality Score and the AdWords Auction


説明資料には、品質スコアの捉え方や、品質スコアの構成要素についての最適化の仕方、広告の品質に影響する/しない要素の説明などが記載されています。今回は、資料の中の重要だと思われる部分にフォーカスして、抄訳していきたいと思います。




広告の品質と、品質スコア

品質スコアについては、これまでヘルプで詳細な説明(こちらこちら)があったものの、PDF等で配布可能な公式のドキュメントはありませんでしたが、この資料は誰でも無料で以下からダウンロードすることができます。


リンク:http://goo.gl/WupXkv


この資料は「Settling the (Quality) Score」と銘打たれているように、品質スコアにまつわる都市伝説や理解不足を解決する意図で、非常に分かりやすく簡潔にまとめられています。

資料の2ページに記載されているイントロダクションは、以下のようにはじまります。

"A good ad experience is good for everyone: users, advertisers and Google too. AdWords is built on this idea, and one of the key ways we make that good experience happen is by measuring the quality of your ads.

Our measurement of quality helps us show more useful ads in higher positions on Google.com search results pages, so that users see ads that are relevant to their query and advertisers get clicks from qualified users. Besides creating happier users, those high-quality ads have the potential to earn extra benefits for advertisers, like lower costs per click and eligibility to surface more information with ad extensions.

This makes ad quality critically important to AdWords advertisers. Yet there are plenty of misconceptions about the topic, specifically about the metric Quality Score that’s reported in your account. In an attempt to clear up some of those misconceptions, we wanted to explain how advertisers should think about and react to their Quality Score metrics. "

"良い広告体験は、ユーザー、広告主、そして Google という関係者すべてによい影響をもたらします。アドワーズはこの考えに沿って構築されており、この良い広告体験を作り出すための重要な方法として、広告の品質というものを計測しています。

品質の計測をすることで検索結果の上位に有益な広告を表示することが可能になり、その結果、ユーザーは検索クエリに関連性の高い広告を見ることができ、広告主は広告の目的に合った適切なクリックを得ることができます。ユーザーによい体験をしてもらうだけでなく、広告の品質を高めることは、CPCが安くなり、広告表示オプションによって多くの情報をユーザーに届けることができるようになるなど、広告主がより多くのメリットを享受できることにつながります。

これが、アドワーズの広告主にとって「広告の品質」が非常に重要であることの理由です。しかしながら、このトピックについては、特にアカウント内に表示される「品質スコア」という項目について多くの誤解があります。その誤解を解く目的で、「品質スコア」という指標をどのように捉えればいいのか、ご説明したいと思います。"


この説明は、以前からヘルプなどに記載されていたことの繰り返しです。特に目新しい何かがあるわけではありません。

つまり、この資料はこれまで秘密にされてきた何かを公にするのではなく、2005年に品質スコアが導入されてからこれまで続けてきた説明を、もう少し踏み込んで言えば品質スコア以前からある「広告の品質」という概念について、あらためてきれいにドキュメントとしてまとめて説明したものだと理解することができます。

資料は全部で10ページありますが、最初のイントロダクションに続いて、3ページにサマリーがまとまっており、4ページ目以降に詳細に説明するという構成になっています。ここでは、3ページのサマリーを抄訳してみたいと思います。




1. 品質スコアは便利な計測ツールであり、KPIではない

「品質スコアを10にするためにはどうすれば…」という会話は今でも時折耳にしますが、これは品質スコア自体が目的になっているからこそ出てきてしまいがちな発言で、品質スコア自体はあくまでパフォーマンスを測る際に使えるシグナルの一つであり、KPI にしてはいけないと書かれています。

喩え話として、「品質スコアは、広告やキーワードの健康状態を教えてくれる、車の警告灯のようなもの(Your Quality Score is like a warning light in a car’s engine that shows how healthy your ads and keywords are)」だと表現しています。

2. 変更する意味のある部分に焦点を当てて最適化する

品質向上のための努力は、自分で変更可能で、かつ意味のあるところから手を付けましょうと勧めています。広告運用者は大抵の場合とても忙しく、重要でないポイントに時間をかけている暇はないと思います。インパクトがしっかり出せるポイントを見極め、賢く最適化していきましょうと書かれています。

そう考えると、「順位が上がればCTRが上がって品質スコアも上がる可能性があるので上限CPCを上げる」といったような施策は、全く意味がないとは言いませんが、本当に品質を改善したいのであれば他にやるべきことがあるよねということですね。

3. 広告品質について大事な3つの要素を意識する

3つの大事な要素とは、「広告の関連性」「推定クリック率」「リンク先ページの利便性」です。


この資料の5ページでも説明がありますが、広告のオークションではこれらの要素(やクエリ、デバイス、場所、時間など多くの要素)もリアルタイムに計算されているため、アカウントで見れている10段階の品質スコアはあくまで参考でしかないと書かれています。

また、キーワードの隣のフキダシアイコンで確認したときのステータスが「平均より下」の場合の対策として、それぞれ以下の表にあるアクションとるとよいと勧めています。


  • 広告の関連性が平均より下→ ユーザーの検索クエリと広告のマッチングを高める

  • 推定クリック率が平均より下→ より魅力的な広告を作る

  • リンク先ページの利便性が平均より下→ 使いやすく関連性の高いページを設定する





  • 4. 広告の品質に関連すること/しないこと

    続いて、広告品質を高めるために意味のある最適化ができるよう、何が関係していて、何が関係していないのかを理解する必要があります。それぞれ代表的なものが以下のような表になっています。


    関係すること

  • ユーザーのデバイス→ モバイルのターゲティングやモバイルサイトの利便性などを考える

  • 新たに設定されたキーワードは関連ワードのパフォーマンスの影響を受ける→ 関連する検索語、特に高品質になる可能性の高い領域はしっかりとカバーする

  • ユーザー意図との関連性→ 広告とランディングページがユーザーが求めていることとマッチしているかを確認する


  • 関係しないこと

  • アカウント構成(キャンペーンの名前や広告グループの数)→ 運用しやすい構成にできるのであれば再構築する

  • 他のネットワーク(検索パートナーやGDN)→ キーワードの品質はあくまでGoogleプロパティ(ex:google.com)の結果に基いて判断されるので、他のネットワークをトライしても影響はない

  • 広告の表示順位→ 高順位を得るために入札単価を上げることは品質の向上に寄与しないので、ユーザー体験を向上することに注力する



  • 上記で面白いのは、新たに追加したキーワードは、アカウント内の関連する(近い)キーワードのパフォーマンスの影響を受けるという部分ですね。広告の品質を測るために推定クリック率が重要な要素だと考えると、新たなキーワードは推定する要素が既存のキーワードより少ないので、意味の近いキーワードの実績が考慮されるということだと思います。

    また、アカウント構成は直接的に品質に影響はしないとも書かれています。ただし、ここでいうアカウント構成とはキャンペーンのネーミングや広告グループの数などを指しており、「アカウント構成」という言葉から連想されるような、キャンペーンやグループの内訳という意味ではないことに注意が必要です。 運用しやすいキャンペーンやグルーピングを設計することは日々の最適化を後押ししますので、結果的に広告の品質に資することは多いのではないでしょうか。


    品質スコアは指標であって、追いかけるものではない

    個人的には、資料の最後のページにある以下の一文が、この資料で言いたいことのすべてだと思います。これは品質スコア誕生前の「クリック率≒ユーザーの支持」だった時代から、ずっと変わっていないメッセージです。

    "Remember, too, that there are differences between auction-time quality and the 1-10 Quality Score number that appears in your account. Your Quality Score will give you insight into how you’re performing, but “chasing the number” shouldn’t be the focus of your optimizations. Be relevant, be compelling and drive traffic to landing pages that deliver on what you promise in your ad, and you can feel confident your score should reflect that quality"

    "繰り返しますが、オークションで計算される「品質」と、アカウントで見る10段階の「品質スコア」は違います。品質スコアは、広告のパフォーマンスについての詳細な情報を提供するものであり、その数値を追いかけるものではありません。関連性を重視し、魅力的な広告文で約束した情報があるページにユーザーを導いて下さい。そうすれば、品質もおのずと付いてきます。"

    「関連性を重視し、魅力的な広告文で約束した情報があるページにユーザーを導く」というのは、言い換えれば AdWords の広告グループの機能のすべてです。

    ユーザーニーズが近いキーワードをまとめて広告グループにし、そのニーズに合わせて適切で目を引く広告文を作成し、広告文で謳った情報があるページをリンク先として指定するという、リスティング広告の基本が改めて強調されています。


    AdWords のベスト・プラクティス資料集

    余談ですが、今回の品質にまつわる資料だけでなく、AdWords に関する資料がまとまった「Best Practice Series」という資料格納ページが、Search Engine Land とのコラボレーションで公開されています。

    リンク:
    Google AdWords Solution Center - AdWords Best Practices Series


    上記のページには、ショッピングキャンペーンの説明資料や、広告文の書き方、入札の賢い方法など、多くの資料がまとまっており、今後も更新されていくようです。

    ちなみに、日本には以前から AdWordsビジュアルナビという資料集のページがあります。海外のページより既に何倍も充実しているので、助かっている方も多いのではないでしょうか。こういった丁寧な仕事はぜひ続けて頂きたいと思います。


    Hal Varian氏による説明動画

    最後に、Google のチーフエコノミストである Hal Varian 氏は、今回のブログポストとほぼ同じタイミングで、広告ランクや広告オークションの説明動画をアップしています。氏は2009年に品質スコアについての説明動画を公開していますが、今回はその更新版として、今回の資料の発表に合わせてリリースしたものと思われます。




    今回の説明動画のハイライトは、昨年秋から物議を醸している、広告ランクの計算に広告表示オプション(動画内では「Ad format」)が含まれるという部分の説明です。これまでの広告ランクの計算である「上限CPC × 広告の品質」に加えて、広告表示オプションを加味する際の影響について説明しています。

    広告表示オプションはその時のユーザーの状況(クエリやデバイス等)に合わせて最適だと思われるものが表示されます。そのため、ユーザーの意図やタイミングにバッチリ合う広告表示オプションがあれば、その影響は広告ランクに加味されるということですね。

    ちなみに、この動画には WordStream の創業者である Larry Kim氏が噛み付いています。説明を分かりやすくするために敢えて単純化した式に「正確じゃない」とツッコむのは大人げないなあと思いますが…。

    もとい、広告の品質はそれ自体が KPI ではなく、このリアルタイムオークションの世界で、ユーザーの利便性と企業の収益を高め、その結果プラットフォームであるGoogle (ディスプレイであれば広告枠のあるパブリッシャーも含む)の収益性を高めることによって健全な競争のあるエコシステムを作っていくために、最も重要となる基本コンセプトです。

    そして、広告の品質の計算がどうであったとしても、広告主が見込み顧客に対してすべきことは特に変わらないのだと思います。ユーザーに焦点を当て、ユーザーに提供できる価値を広告とランディングページでしっかり表現することが、結果的に売上や信頼というスコアになって返ってくるのではないでしょうか!

    eBayの判断に学ぶ、大規模Eコマースの広告運用トレンド

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    検索連動型広告は売上にそれほど貢献しない?

    2013年3月に、米国最大のマーケットプレイス/オークションサービスの eBay が発表した「Google の検索連動型広告は売上に対してそれほど効果的ではない」という主旨の調査資料は、リスティング広告の従事者にとって少なからず影響を与えました。


    参考:EBay study questions value of Google's main ad service | Reuters

    この調査によると、2012年の4月から7月の3ヶ月に渡って、AdWords を続ける地域と停止する地域とに分け、それぞれの売上の推移について分析したところ、広告を停止した地域での売上に目立った低下が見られなかったとのこと。

    他にも、「過去1年間で eBay で3回以上購入経験のあるユーザーについては検索広告経由でほとんど利益が創出できなかったものの、eBay での購入履歴がない新規ユーザーに対しては効果が認められた」など、独自に行った調査結果が報告され、話題を呼びました。

    eBay は、「他の企業にとっては検索連動型広告がもっと機能するケースはあるだろうし、知名度の低い企業にとっては検索連動型広告は有効」というフォローも入れてはいるものの、この調査が公表された直後から米国の SEM従事者は色めき立ち、「それは単に eBay の広告運用が酷いだけでは」という指摘が殺到し、議論に発展しました。当時の議論の流れは、以下の Search Engine Land の記事にまとまっています。


    参考:AdWords "Ineffective" Says eBay, Google "Meta-Pause Analysis" Contradicts Those Findings


    また、2014年の6月に調査資料の最終版が発表されたことで、前年に盛り上がった議論が1年ぶりに再燃したのも記憶に新しいです。34ページに渡る詳細な調査報告によって、前年に発表された調査が具体的にどのようなものだったのかを確認することができます。


    資料(PDF):faculty.haas.berkeley.edu/stadelis/Tadelis.pdf




    キーワード挿入機能の不備

    eBay の広告運用のまずさを指摘する代表的な論点としては、キーワード挿入機能(DKI:Dynamic Keyword Insertion)の不備が挙げられます。

    キーワード挿入機能は、ご存知のとおり「広告グループ内のキーワードを広告テキストに動的に挿入することができる機能」ですが、広告表示のトリガーになったキーワードが広告文に挿入されるということは、アカウント内のキーワードによっては広告文が文章として意味をなさないケースが出てくることがあります。

    eBay のように、キーワードが大量かつ自動的にに入稿されているEコマースサイトでは、キーワード挿入機能によっておかしな広告が発生しやすくなります。eBay の発表では、2012年終了時で 1億7,000万キーワードが設定されていたそうですから、中にはとんでもないキーワードもあっただろうことは想像に難くありません。

    実際、eBay のキーワード挿入のマズさは有名なようで、以下のページにスクリーンショットがまとまっています。(NGワードだらけで、ちょっと訳しにくいですが…。)日本でも、「○○ならAmazon」という広告が攻めていると話題になったことがありましたね。

    参考:
    eBads - the Bad eBay Ad Search Game
    Humorous eBay Internet Ads - Vaughn's Summaries

    (クリックすると拡大します)


    キーワード挿入機能を使った広告のマズさは、WordStream のブログをはじめ、様々なところで指摘されました。「リスティングが効果的でないのは、AdWords の問題じゃない、eBay の広告戦略の問題だ」という指摘は、辛辣ながらも一理あると考えられます。


    検索連動型広告の代替案としての商品リスト広告

    eBay は2012年の1年間で5,100万ドル(約51億円)をリスティング広告に支払っていると発表しています。eBay の販管費の中の「Sales and Marketing」の項目は3,000億円ほどあるため、リスティング広告がこの調査のあとで増減どちらに転じているのかは決算報告からは分かりませんが、彼らの広告戦略が2013年から徐々に変化していることが Business Insider で報告されています。


    参考:eBay, Amazon And Google's PLA Shopping Ads - Business Insider


    (赤枠はadmarketech.による追記)


    上記の図は、2013年の1年間の商品リスト広告を利用した広告主のランキングですが、eBay は2位に位置しています。1位と3位が、多くの企業の商品リスト広告を扱うプラットフォームである Kenshoo と DoubleClick なのを考えると、1つの広告主企業としては圧倒的な1位だと言っても過言ではないでしょう。検索連動型広告の効果に疑問を呈した資料を発表しつつ、商品リスト広告には強烈に投資していることが分かります。

    Marin Software によると、2013年の商品リスト広告の取り扱い高は、2012年と比べて3.7倍(269%増)になったと言われています。eBay は Google Shopping の有料化には難色を示していたと言われていますが、商品リスト広告の強烈な伸長の背景には、結果として eBay の積極的な投資が影響していると言っても言い過ぎではないかもしれません。


    eBay の判断に学ぶ、Eコマースリスティングの広告運用

    eBay の発表した調査報告には、SEMのエキスパート達からネガティブな反応が殺到しましたが、年間数十億円という、決して少なくない費用を掛けている広告に対して、その投資対効果を測っていこうとする姿勢は尊重するべきだと思います。

    この調査にかけたであろう少なくない費用は、外部的には検索連動型広告の投資対効果を疑問視するという、余り生産的でないアウトプットとして表現されましたが、おそらく内部的には、キーワードと広告の自動生成(サイト内検索や検索クエリの自動入稿など)の限界も同時に指摘されていたのではないでしょうか。

    常識的に考えて、億を超えるキーワードを手動で管理することは不可能です。「eBay の広告戦略は酷い。適切な広告を出すべきだ!」と指摘するのはかんたんですが、自動化しないとどうしようもないほどの規模の広告をマネジメントしなければいけない企業にとって、その実現は容易ではありません。今回の調査は、検索意図に沿った広告を適切かつ自動的に生成する手法の一つとして、データフィードの広告である商品リスト広告という代替案を有利に活用し続けるために、検索連動型広告の有用性を疑問視することで煙幕を張った、という穿った見方すら連想してしまいます。(なぜこの発表が必要だったのか分からないと考える人も多いようです)

    eBay の商品リスト広告の投資規模から考えて、現在ではおそらく、動的リマーケティングやDSA(動的検索広告)なども積極的に活用していると考えられます。

    RKG が 2014年7月に発表した調査によると、RKG の顧客であるEコマース関連の広告主のリスティング広告費の内訳は、3割近くを商品リスト広告が占めており、ブランド検索以外では約5割を占めるほどになっているようです。

    観測範囲はかなり偏っているものの、中小のECサイトでは、広告経由クリックのかなりの割合を商品リスト広告が担っているという示唆ではあると思います。

    データフィード関連の広告は、SKU(商品単位)レベルでしっかりとウェブページを作り、マーチャントセンターに代表される外部データベースへ更新するデータフィードを適切に管理していくことで結果的に広告の鮮度や精度が担保される仕組みです。

    これまでのように、リスティング広告のキーワードの生成やマネジメントに時間をかけるのではなく、自社サイトのユーザビリティや情報管理に時間をかけることで、商品リスト広告、動的リマーケティング、動的検索広告などといった集客施策も連動して良くなっていく世界が拡がりつつあります。

    eBay の判断は、ECサイトの集客の現在形を示唆してくれているのかもしれません。

    State of AdOps #11:成果を出すためには、エンドレスで勉強です −アンダス 平野裕亮氏

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    「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

    ※過去の記事はこちらから。

    第11回目は、福岡の雄、アンダス株式会社でSEMユニットリーダーを務め、ご自身でも「でぶててのWEB録」という人気ブログを運営していらっしゃる平野裕亮(ひらの ゆうすけ)さんに、運用型広告の現状や今後の展望について、忌憚のないお話をお聞きしました。


    # インタビューは 2014年7月某日に行われました。



    アウトプットしないと、追いつけないと思った。


    ●まずは、平野さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

    新卒は広告代理店の福岡支社でリスティング広告を運用していたんですが、当時は音楽が仕事の中心で、平日の仕事が副業というような感覚でやっていました(笑)。ですので、リスティングは始めて1年くらいで辞めてしまって、その後はコールセンター、居酒屋、ウェブ制作など、様々なアルバイトを掛け持ちしながらライブをするような毎日でした。結婚やフェス出演を機にそろそろ地に足をつけていきたいと思い、アンダス株式会社に入社し、現在は SEMユニットリーダーとして働いています。

    SEMユニットは発足してから3年目なのですが、それ以前は SEM に特化したチームは社内に存在しておらず、プランナーが SEM に関わる仕事をそれぞれ兼任しながら仕事を進めていました。

    私は SEM の専任としては第一号なんですが、もともと SEM を強化するためにチームが発足したわけではなく、弊社のクライアント様で電話番号でのコンバージョン計測をかなり強化されている企業様がいらっしゃるのですが、そこで弊社のシステムと先方のシステムとをつなぎあわせて計測するというプロジェクトの中で、技術面や広告運用面の専任チームを作る必要性が出てきたため、それが巡り巡って現在のかたちになっています。

    以前から電話番号計測は仕組みとしてありましたが、多い場合は1社で200番号程度あるので、計測の全体設計が非常に重要になります。それを体系化していく作業は、現在メインの業務であるリスティング広告のノウハウと通じるところがあると思っています。


    ●非常にユニークな経験で、もっとお聞きしたいですが…(笑)。ちなみにブログも書かれていらっしゃいます

    ブログ「でぶててのWEB録」を始めたのは2012年の5月です。SEM に関する記事は当時どんどん増えていましたが、電話計測やタグマネジメントに関する記事は少なかったので、自分でも何か書けないかなと思って始めました。

    あとは、個人的な理由としては、SEM-LABO の阿部さんをはじめ、SEM のトッププレイヤー達に追い付きたいと思ったら、とにかくアウトプットするしかないと考えたことですね。

    また、会社としても、アンダスは社長である前田がワントップのように見られていますので、もっと会社として厚みがあることを見せたいと思った時に、ブログは一つのきっかけになるかもしれないと思ったのもあります。こっそり書いてあとで自慢しようと思ったら、会社の人たちにはすぐに見つかってしまったのですが(笑)。

    最近では、ブログを通じて知ってくださる方も増えてきて、非常に有り難いと思っています。


    電話計測に合わせたアカウント設計もある。


    ●SEMユニットの体制や、特徴などはありますでしょうか?

    私自身が得意だからというのもありますが、必要なノウハウ等をまとめてチーム内で共有するようにしています。新しい手法やチャネル等がどんどん出てくる分野ですし、データをつなげて分析することも多く、施策自体が複雑化しやすいので、放っておくとどうしても混沌としてきてしまいます。ですので、品質を管理し、事故を防ぐために、情報を整理することを心がけています。

    先ほど少し触れた電話計測の件でも、情報を整理することがそのままアカウント構築のルールづくりに繋がっていきます。


    ●具体的にどんなルールがあるのでしょうか?

    例えば、リスティング広告で、似た意味の部分一致キーワードが別々の広告グループに入っていると、ある特定のクエリがそれぞれのキーワードで表示されてしまう、という問題が発生すると思います。

    電話計測を密にやろうとすると、重要なクエリが複数あるアカウントではクエリと電話番号を合わせないといけないという状況が発生するのですが、通常のアカウント構成だとどうしてもクエリと電話番号の組み合わせを精緻に実装するのは難しいため、それぞれの導線を整理するために、1広告グループ1キーワードで構築するようにしています。

    これは一見負荷の大きいアカウントのように思われますが、検索クエリを見なくても検索クエリが分かる構成になっているので、精緻な電話計測が必要なアカウントにとっては実はリーズナブルな構成です。もし電話計測がなかったらこういう発想にはならなかったように思います。

    同じようなことは電話計測以外でも言えまして、Google Analytics と繋げたときに分析しやすい構成だとか、データをダウンロードした後にそのままVBですぐに加工できる配列にしておくとか、とにかく業務フローが整理して効果と効率を両立できるように工夫を続けています。


    ●電話番号計測仕組みは通販大国の九州ならではの取り組みなのでしょうか?

    他の企業さんのことは分からないのですが、弊社の特徴であるとは思います。

    弊社はSEMユニットができる前からシステムと制作とプランナーの三位一体でお客さまと取り組むようにしていたので、電話計測の仕組みをリスティング広告の仕組みに組み込んでいくことは比較的やりやすかったです。この三者が一体にならないと、CPA の改善はできないと思っていますので。

    現在はスマイルツールズ(SmileTools)というツールがありますので、 健康食品や通信販売のお客さまが多いのは確かですね。




    制作者に制作をしてもらうためのタグマネジメント


    ●システムや制作の方々と一体で動けるのは強みですね。

    そうですね。弊社は Google Analytics などのアクセス解析ツールや、各種のタグをまとめるタグマネジメントの導入を必須にしているのですが、それはシステムや制作を一緒に仕事をすることと密接な関わりがあります。

    SEMユニットの業務領域は他のリスティング広告を提供する広告代理店さんとほとんど同じだと思いますが、タグマネジメントはもともと制作者やシステム担当者のために導入を進めました。

    誤解を恐れずに言えば、タグの設定作業は、何も生みません。誰でもできますし、クリエイティブな仕事とは言えないと思います。お客さまの利益を引き上げることができるクリエイティブを作れる製作者が、タグの設定に忙殺されるというもったいない状況を何とかしたかったので、タグマネジメントの導入は必須にしています。現在は GTM(Google Tag Manager)と YTM(Yahoo!タグマネージャー)を入れていますね。


    ●実際に製作者の時間配分は変わったのでしょうか?

    体感としてかなり変わったと思います。広告を設計・運用するSEMユニットでタグが管理できるようになったので、制作はタグ関連の作業に関わることなく、本来のクリエイティブな仕事に時間を割けるようになっています。

    これは、制作の機能が社内にあるからこそ気付けたことです。「タグの設定面倒くさい!」という声が目の前で聞こえるわけですから(笑)。

    同じ意味で、システムに詳しい人が社内にいるのも大きいです。「このデータがおかしい」といったケースがあれば、詳細に調べてくれるので原因の発見までのタイムラグも短いです。三位一体であることの強みだと思っています。


    ●タグマネジメントを行う上で気をつけていることは?

    例えば jQuery を使っている時に GTM だと変な動きをしたりとか、気をつけないといけないことがあるので、YTM と併用したりチェックリストを作成するなど、それぞれどう管理するのかを平準化するようにしています。あとからタグの中身を変えたいとか、追加したい、管理者が変わったといった状況になっても、タグマネジメントさえしっかりできていれば、お客さまに迷惑がかかることはありませんので。

    そういう意味では、タグマネジメントは本来お客さま側で管理すべきなんだと思います。現時点では YTM が Yahoo! のプロモーション広告アカウントと紐付いているという事情があるので広告代理店が管理しているだけで、責任や安全性の観点からはお客さま自身で管理された方が、責任の明確化や安全性の観点からも望ましいのかなと思います。


    ●自身で管理されている広告主さんはいらっしゃいますか?

    実際はほとんどいらっしゃらないのが現状です。ですので、サービス導入の際はメリットだけでなく、リスクもしっかりお伝えしてご理解頂いてから導入するようにしています。

    もちろんメリットが明確でないと稟議が上げにくいとか、現場のご担当者ならではの悩みもあるので、「アフィリエイトの重複コンバージョンのチェックが楽になりますよ」ですとか「タグのメンテナンスでかかっていた制作費がなくなりますよ」といった既にかかっている工数に換算してお伝えすることはあります。


    固定費より、データが見えないことがリスク


    ●先ほどの電話計測(コールトラッキング)の話ももう少しだけお聞きできればと思いますが、かなり沢山の番号を管理されているとお聞きしました。

    はい、もともと回線業者さんからご相談があってスタートした話なのですが、あれよあれよと番号が増え、今では発行しているだけで1,000番号くらいあると思います。一番使っている企業さんは、広告を新たに作る場合は必ず電話番号を振るようになっています。

    例えば、チラシのような紙媒体、提携先のウェブサイト、検索連動型広告、ディスプレイの媒体やターゲティング別、メールマガジン、アフィリエイトなど、電話番号一つ一つが広告媒体を識別するフラグのようなイメージです。

    電話番号にはもちろん固定費がかかりますが、データが見えないほうがリスクです。お客さまも電話でのコンバージョンがメインの業種が多いので、運用には必要なコストだとご理解されています。計測ができていなければ、効果を改善する施策がそもそも打てなくなりますので。


    ●具体的にはどのように管理されているのでしょうか?

    コールトラッキングは弊社の LPO のシステム( aLPO: 非公開 )と紐付いているので、例えば検索連動型広告でキーワードごとに番号を出し分ける場合は、ウェブサイト側で電話番号を動的に出し分けるようにシステムと連動しています。もともとLPOツールとして開発したものを電話番号に対応できるようにカスタマイズしていったものです。

    最近も開発は進めていまして、これまでは架電の実績をデータベース化したものを広告の実績とマージしてレポートとして出力していましたが、今ではタグマネジメントと連動して広告の管理画面で電話番号の CPA まで見れるようにしています。それによって、電話番号をタップした回数と、実際に架電が発生した回数の差分なども把握できるようになりました。


    ●そこまで徹底されている事例はあまり聞いたことがないですね。

    先ほどのタグマネジメントの話と同じで、システムを内製しているからこそ実現可能だったんだと思います。あとは、運用にちゃんと落とし込めたことですね。

    個人的には、現職に就くまでの コールセンター 居酒屋、フリーランスでのウェブ制作それぞれの経験が役に立っています。特に、コールトラッキングは回線系のお客さまで実施していますので、コールセンター内部のオペレーションを把握していますので、非常に役に立ちました。現場用語で通じますし(笑)。偶然の産物ですが、経験って繋がるものだなあと思っています。

    コールトラッキングはオフラインとオンラインをつなげる施策でもあるので、今後はセミナー(※ページ下部に詳細)などで伝えていく活動もしていきたいと考えています。



    面白がることと、それを伝えること。


    ●では話題を変えて、普段の広告運用のお仕事で心がけていることなどがあれば教えて下さい。

    「効率化」は心がけています。例えば一日5分効率化できたとすると、一週間で25分、一ヶ月で約2時間浮くことになります。2時間あれば、売上を上げる活動に時間を割くことができます。

    究極は自分の1秒あたりの売上をどうやって上げていくか、ということなのかなと思っています。だからこそ効率化にこだわって、多少時間がかかっても効率化のための VB を組み上げる、といった作業には積極的に取り組むようにしています。同じ仕事を3回するのであればシステム化するという会社さんがいると聞いたことがあるのですが、いい発想だなと思って意識するようにしています。

    日本は人口も減っていきますし、労働効率を上げないとどんどん忙しくなって生産性が落ちます。毎晩深夜まで残業して、プライベートを犠牲にしてまで働くべきではないと思っているので、とにかく「効率化」はみんなで幸せになるためのキーワードです。


    ●今後の展望などがあればぜひ教えて下さい。

    現在取り組んでいる領域は SEM なのですが、SEM って一体どこまでやるのか?と考えることがあります。Yahoo!プロモーション広告でTwitterプロモ商品が出せるようになるけど、それって誰が担当するのだろう?といったように、広告を運用する担当者が携わる領域がどんどん拡がってきています。

    どこまで拡げなくちゃいけないんだろうかと考えると、もちろん全部やりたいんですが(笑)。検索だけで済むわけではないですし、とにかく勉強すべき領域が広いですよね。

    一方で、経営としては媒体費の 20% マージンの中で利益を出さなければいけないという現実もありますので、利益と管理費のせめぎ合いです。


    ●そのあたりって、企業や個人のフェーズによって解は変わると思いますが、平野さんとしての現時点での回答ってありますか?

    私の仕事はお客さまの売上をあげることなので、そのための手段として今 SEM をやっているだけだと思えば、引き出しは沢山持っておくに越したことはないと思います。A がダメなら B も C もあるという状態にして、とにかくフットワーク軽くお客さまに必要なものを見極めていけるように頑張ります。だから、エンドレスで勉強です。

    あとは、これはどんな仕事にも言えると思いますが、運用はなかなか大変な仕事なので、「いかに面白がれるか」も大事だと思います。今日は100件コンバージョンがありましたという時に、ただ漫然と「100件だ」と思うのか、「一体どこが良かったのだろう?どこから来たのだろう?」と思うのは、大きな違いです。数字だけ見ていても面白くないですから。

    やれることが多くなって現場は混乱しがちですが、運用型というのは数字が見えやすくなって、施策がやりやすくなっただけだと思っているので、自分自身がそれを面白がって、面白さを伝えていけるようになりたいですね。


    ●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


    アンダス株式会社

    ※セミナー情報
    9月3日(水)にセミナーが行われるそうです!
    詳しくはこちら → http://andus.co.jp/seminar/
    ※受付は終了しました(2014年8月31日)

    ショッピング向けAdSenseが拡げる、商品リスト広告(PLA)の可能性

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    商品リスト広告(PLA)へ予算をシフトする大手広告主

    2012年に本格的にスタートした商品リスト広告(以下:PLA)は、ほんの僅かな期間でEコマースの検索連動型広告において主役とも呼べる位置にまで急成長しました。

    2014年初頭に「2014年末までに、Eコマース事業者が PLA に割り当てる広告費は、検索連動型広告の予算総額の3分の1に達するだろう」という Marin Software の予測が出ていましたが、今ではその予測を上回るほどドラスティックに予算配分を変更している企業も多いのではないでしょうか。

    参考:2014: Year of Google Product Listing Ads | Marin Software


    実際、Adgooroo が60,000クエリを元に調査した 2014年第二四半期(4−6月)の広告主別のデータによると、広告費上位のEコマース事業者は、その広告費の過半を PLA に割り当てているという驚くべき結果が報告されています。


    参考:Top Paid Search Advertisers Spent 63% of Budget on Product Listing Ads | Adgooroo


    eBayの判断に学ぶ、大規模Eコマースの広告運用トレンド」という記事でも触れていますが、2012年まで実に2億近くのキーワードを入稿していたeBay(↑の表で6位)が、2014年では完全に振り切って予算の大半を PLA に割り当てているという事実が、Eコマースの広告運用のトレンドを如実に表していると言えるのではないでしょうか。

    ちなみに、3位の Amazon がまったく PLA を利用していないのには、PLA が Amazon の商品検索広告 Amazon Sponsored Productsと完全に競合するため、マーチャントセンターにデータを開示していないからだと思われます。


    Eコマースリスティングの主役は PLA へ

    上位の広告主の状況が示すように、PLA の市場規模も順調以外の何者でもない勢いで成長を続けています。

    RKG が発表した2014年第二四半期(4−6月)のレポートによると、PLA の Bing版である Bing Product Ads を含む商品フィード広告費は、前年同期比で72%増加しており、急成長した2013年から勢いはまったく衰えないまま伸長を続けていることが分かります。Bing Product Ads が正式に開始したのは2013年の第三四半期からなので、実質このデータは PLA のみのデータだと捉えて問題ないと思います。

    参考:Google Sees Overall Growth Accelerate in Q2, Yet Still Has Opportunity to Expand PLAs - RKG


    PLA はこれまで、通常の検索連動型広告と比べてクリック率やコンバージョン率が高く CPC が低いという、ROI で判断したときに優位性があるという理由で伸びてきていました。

    実際、Marin Software がつい先日(2014年9月)発表した白書「THE 17 TRENDS, PUBLISHERS, AND BEST PRACTICES EVERY RETAILER NEEDS TO KNOW」でも、2013年1月から2014年6月までの1年半の計測期間を通じて、常に PLA の方が通常の検索連動型のテキスト広告のクリック率を上回っていることが示されています。

    参考:The 17 Trends, Publishers, and Best Practices Every Retailer Needs to Know | Marin Software


    一方で、最近の調査では、PLA の CPC に関してはもう以前ほど割安感はなく、ほぼテキスト広告と変わらなくなってきているという結果も出ています。

    これは、前述の広告主の広告予算比率が示すとおり、Eコマース事業者が ROI の見合わないキーワードの予算を PLA にシフトしていることで、PLA のオークションプレッシャーが高まるのと同時に、相対的に検索連動型広告のキーワードのBroad Terms(一般ワード)比率が下がり、 Branded Terms(社名キーワード)の比率が高くなることで、以前より両者の CPC が拮抗してきていることを示しています。

    参考:Google Sees Overall Growth Accelerate in Q2, Yet Still Has Opportunity to Expand PLAs - RKG


    もちろん、PLA のコンバージョン率は引き続き高いため、通常のテキスト広告より ROI に貢献しやすい状況は継続しています。言い換えれば、PLA は社名ワード以外ではほぼ最優先の施策になってきた、ということになるのかもしれません。


    「効果が良い」以外の成長ドライバー

    PLA が急成長している理由は、効果だけでなくその仕組みにもあるという点も忘れてはいけない事実です。

    PLA はプロダクトフィードをもとに自動的に広告が生成される仕組みのため、マーチャントセンターと商品データベースのつなぎ込みさえできれば(および適切な中間処理ができれば)、Eコマースリスティングの運用で企業を悩ませてきた「キーワード数が肥大しがちで、入れ替わりが激しい」「そのため、広告費以外の部分で運用コストが非常に高い」という問題も同時に解決できるという利点があります。

    PLA が登場する以前は、システム投資が可能な一部の大きなショッピングサイトや、サードパーティツールを利用する広告主以外では、キーワードや広告入稿等のオペレーションの自動化は難しかったのが実情でしたが、PLA や DSA(動的検索広告)など、フィードデータやクローリングによる広告作成技術の進歩・多様化によって、ヘタなマニュアル運用よりも場合によっては精度が高く、広告効果も高い配信が可能になりました。

    PLAを始めとした新しい広告配信方法によって、最大手の広告主以外でもデータベースやウェブサイトと連動した広告の利用が急速に進むことになり、結果的に運用の効率化にも結びついていると考えられます。

    実際、2014年8月に行われた、米国を含む主要5カ国の大規模Eコマース事業者(従業員が200人以上)240社を対象にした Forrester と Google の共同調査によると、自社のリスティング広告運用を半分もしくはそれ以上自動化している企業は全体の 75% にも及び、完全自動化している 8% の企業を含めると、全体の8割以上が運用の大半を自動化しているという調査が出ています。


    参考:think.storage.googleapis.com/docs/faster-pace-for-retail-paid-search_research-studies.pdf


    何を「自動化」と呼ぶのかは企業によって違いがあると考えられるものの、「マニュアル部分が多いが一部自動化している」という企業も全体の 16% あることから、広告技術を活用した運用自動化は、煩雑になりがちなEコマースリスティング広告において、既にトレンドというより常識に近いレベルだと言って差し支えないと思われます。

    ここで重要なのは、「自動化だから人手が要らない」ということではなく、自動化の促進によって、手動で行う仕事が高度化(上流工程へのフィードバックや、分析の多様化)し、マニュアル作業の重要性が一層高まっているということだと思います。自動化が進めば進むほど、仕組みを理解して適切な意志決定ができる人材の市場価値は以前より高まるものと考えられえます。


    PLA の抱えていた広告在庫問題

    急拡大する PLA の需要を支えるため、Googleは、モバイルPLA の展開や、PLA が表示されるクエリの閾値の調整、ローカル在庫広告の展開など、様々な対策を短い期間で立て続けに行なってきました。

    しかしながら、PLA はあくまで検索連動型広告であるため(ディスプレイの場合は「動的リマーケティング」)、コマーシャルクエリと呼ばれる購買意向がある程度見込まれる検索クエリの回数がそのまま広告在庫数になります。購買に繋がる検索数が増えない限り、どこかで規模の拡大が頭打ちになってしまう構造です。

    検索連動型広告には、Coverage(カバレッジ:検索クエリに対して広告が表示される割合)と Depth(デプス:検索クエリに対して表示される広告の本数)という概念がありますが、PLA は商品情報を表示する広告である以上、広告表示はコマーシャルクエリに限るため、カバレッジは極端には増やせません。そのため、これまでは Depth にフォーカスが当たっていました。

    これはつまり、どうすれば検索体験を損なわずに PLA の広告ユニットを増やせるのか、という工夫が必要なことを意味します。PLA は画像や価格などの商品情報を検索結果に表示する広告であるため、テキスト広告より検索結果に表示面積が必要です。通常のテキスト広告より Depth に制限があるということです。

    表示面積を広げすぎて検索結果の画面が商品画像で埋め尽くされるようなことになってしまうと、検索エンジンそのものの利便性が損なわれ、ユーザーが離れてしまう危険性があるため、表示面積とユーザーの利便性を損なわないギリギリのバランスで検索結果を表現するために、これまで Google は短い期間でさまざまな表示形式の変更をテストしていました。

    例えば、Carousel(カロウセル)というヘッダーロールテストは、まさに Depth を増やすために行われていたと考えられます。

    参考:PLA-carousel | CPC Stragegy


    広告在庫を拡張する「ショッピング向けAdSense」

    表示面積の少ないモバイルデバイスの急速な伸びも PLA の平均Depth にマイナスインパクトがあるため、拡大する PLA の成長率を維持するためには、表示形式以外での広告在庫の増加こそが差し迫った重要な課題だったと推測できます。そこで2014年9月に登場したのが、「ショッピング向けAdSense」と、「PLA の検索パートナーへの拡大」です。



    参考:Google Brings PLAs To Third-Party Sites Like Walmart.com


    このショッピング向けAdSense(AdSense for Shopping)は、リテールサイトに特化した AdSense の新しいユニットで、PLA のみこの枠のオークションへ参加することができます。

    リリースにもあるように、AdWords の広告主は、ショッピングキャンペーンの設定で「Google 検索パートナー」が有効になっていれば、ショッピング向けAdSense のあるサイトでのサイト内検索をしたユーザーに広告を表示することができます。AdSense側からすると、検索向けAdSense の PLA 版ということになり、既に存在している動的リマーケティングはコンテンツ向けAdSense に表示されますので、フィードを利用した広告が出る枠としては、それぞれ棲み分けることになります。

    ショッピング向けAdSense があるサイトは、2014年9月のリリース時には Walmart.com しか公開されていませんし、参加するにはフォームから申請する必要があるため、普及しているコンテンツ向けAdSense のように大小さまざまなサイトが大量にあるというよりは、一部のショッピングモールや比較サイトなどが中心になると考えられます。


    参考:Inside AdWords: Extend the reach of your Product Listing Ads to qualified shoppers


    通常のテキスト広告と同様、パートナーでの表示結果は品質スコアに影響しないという旨がリリースには明記されていますので、品質の計算はGoogleプロパティのみで行われることには変わりがないようです。また、通常の検索連動型広告と同様に、個別の検索パートナーごとの結果を確認することはできません。


    一般には、「サイト上の広告枠=ディスプレイ広告」として認識されており、アドテクの話題はディスプレイ広告のターゲティングに偏りがちですが、サイト内検索にはユーザーのその瞬間の興味が明確に現れていますので、興味関心をわざわざ類推するよりも関連性の高いターゲティングが可能です。ショッピングサイトの収益化にとってもプラスに働くことが期待できると考えられます。

    ショッピング向けAdSense は、PLA を利用する広告主が増加し、広告在庫を拡げる必要に迫られたからこそ出てきた仕組みだと思います。ショッピング向けAdSense によって、商品情報の活用性はますます拡がっていくと同時に、商品情報の活用がEコマースのマーケティングにおいて非常に重要なカギを握ることが改めて明らかになったような気がします。

    商品フィード広告の進化はこの2年ほどで急速にその速度を上げています。引き続きこの分野には注目していきたいと思います!

    運用者を助け、伴走するために。 – アクイジオジャパン 村上和也氏 #State-of-AdOps Vol.12

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    「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

    ※過去の記事はこちらから。

    第12回目は、デジタルマーケティングの運用管理プラットフォームを提供するカナダの Acquisio と日本のアイレップの合弁企業である株式会社アクイジオジャパンで取締役を務めていらっしゃる村上和也(むらかみ かずや)さんに、運用型広告の現状や今後の展望について忌憚のないお話をお聞きしました。


    # インタビューは 2014年8月某日に行われました。


    広告運用を理解したプラットフォーム


    ●まずは、村上さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

    アクイジオジャパンの村上と申します。システムエンジニアを経て2006年にアイレップに転職し、約8年間一貫してリスティング広告に代表される運用型広告に携わっています。

    アイレップに転職した当初は広告運用のアカウントストラテジストとして、様々な業種の様々な規模のアカウントを担当してきました。

    アカウントストラテジストとして3年ほど経った後、アイレップの社内でリスティング広告の研究開発を担うR&Dチームの立ち上げメンバーとして異動し、モバイル広告の研究や、リスティング広告のアカウント設計やルールの整備など、実践的な研究開発機関として仕事をしてきました。

    当時のR&Dチームのミッションにはリスティング広告の自動入札ツールの導入も含まれており、その経緯で様々な自動入札ツールの評価や活用を進めてきました。


    ●そこからアクイジオジャパンにはどのような経緯で参画されたのですか?

    参画はアクイジオジャパンの立ち上げと同時です。先ほど申し上げた、リスティング広告で多くの自動入札ツールを取り扱っていく中で、実際の広告運用にあまりマッチしない機能や、ツールの設計そのものが現場の運用に則していないものがあることが分かってきました。そういうツールを使わざるをえない場合、機能的な部分を自社開発することで補ってきたのですが、それが繰り返されていくとどうしても利用するアプリケーションが増えてしまい、理想の状態になかなか近づけないというジレンマにありました。

    そこで、現場の運用に適した統合的な運用プラットフォームを作っていこうという機運が社内で高まり、Marketia(マーケティア)という構想が立ち上がりました。2010年から2011年にかけてのことです。

    マーケティアの開発にあたっては、単なる自動入札ツールではなく、統合的な運用プラットフォームを作りたいという構想だったため、パートナーとの協業と、ゼロからのスクラッチ開発とを組み合わせながら試行錯誤しながら進めていました。

    モックアップが出来上がった頃、現株式会社アクイジオジャパンの社長である井上が視察に行った ad:tech New York で Acquisio(アクイジオ)の紹介を受けました。井上は帰国後すぐ、マーケティアの開発構想を考えていた私の元に来て、驚いたように「ぜひ見ておいてもらいたいツールがある」と話し、テレフォンカンファレンスを設定したのが、アクイジオとの出会いでした。

    いえ、正確に言えば、その時点でアクイジオとの出会いは2回目でした。数年前に私は、アクイジオの紹介を受けており、思想の端々は良かったのですが、必ずしも使い勝手の良いツールでなく、Yahoo! JAPAN という日本での重要なパートナーとの接続がされておらず、取扱いを見送った経緯があります。そのため、その当時は実はあまり期待せず、カンファレンスに参加しました。ところが、そのカンファレンスで彼らのツールを見せてもらったところ、我々の作ったモックアップと多くの部分で非常に似ていたのです。アクイジオ自身が広告運用を行なっている会社からスタートしていることもあってか、ユーザーインターフェースから運用をしっかり理解した上で構築されているプラットフォームにグレードアップしており、マーケティアの構想とも非常に近いものを感じたため、協業を決意しました。

    そこから日本で合弁会社を作ることになるまでは急ピッチで進めてきました。アクイジオと初めてミーティングしたのが2013年の8月で、その年のクリスマスにアクイジオジャパンがスタートしているので、都合4ヶ月でさまざまな準備をしたことになります。

    アクイジオジャパンは、アイレップとアクイジオの共同出資で立ち上げたジョイントベンチャーですが、法人としてアイレップからは独立して、オフィスも完全に別に設立し、運営しています。我々は、アクイジオ自体は、この運用型広告の業界で改善に取り組んでいる多くの方々に貢献すべきツールである、と捉え、他の広告代理店様にも活用して頂きたいと考えているためです。このツールを広めることをミッションとして、私もアイレップから転籍しています。


    運用者の悩みを解決したい


    ●一人の運用者として、アクイジオを推進する理由は何でしょうか?

    根底にあるのは、運用者が直面している課題と、今あるツールとのギャップを埋めたいという想いです。私は広告代理店にいた人間ですので、運用者の悩みは肌で感じています。先ほど申し上げたような、ツールの設計そのものが現在の広告運用に則していないものがあると分かったときに、ツールと運用者のギャップを埋めるソリューションがあるのであれば、それを提供していきたいと思っています。

    例えば、あるアカウントでルールベースの自動入札を設計したとします。ある程度汎用性のあるロジックであれば他のアカウントに適用し、共有のナレッジにしていきたいと思うものですが、普及しているツールにはそういった機能はなかなかありません。レポートを共有したいというニーズでも同じです。

    アクイジオには、そういった実際に運用していると欲しくなる「(一見)ささいな」機能が数多く揃っています。ツールの設計に運用者の目線が反映されているので、現場で苦労している運用者の助けになると思っています。


    ●他には具体的にどのような機能があるのでしょうか?

    日本の、特に広告代理店においては、運用の中で多くの時間を予算管理業務にかけざるを得ず、課題に感じてらっしゃる場合がございます。予算管理機能があるツールは他にもありますが、ある程度大規模なアカウントでないと予測機能がうまく働かないことが多いため、予算規模の小さなアカウントではなかなか使えないことが多いです。その点、アクイジオは人間の手では達成し難いほどの予算着地率を実現してくれます。

    アクイジオでは入札&予算管理(Bid & Budget Management)という機能があり、予算規模の小さな案件でも利用が可能です。2014年8月の時点では AdWords に対応しており、今後 Yahoo! JAPAN のスポンサードサーチにも対応予定です。どうしても予算管理の必要性から月末に集中する確認作業も、この機能で補完することが可能になります。


    ●自動入札ツールというと、大規模案件で使うものという認識がありますが、そうではないということでしょうか?

    そうですね。実際に米国市場では、アクイジオは SMB(中小企業)向けのツールとしても標榜しているところがあります。

    アクイジオが得意な領域はリスティング広告ですが、他にも、データを取り込むためのコネクターが充実しており、DSP やその他様々なデータをつなぎあわせて統合的に管理することが可能です。


    自らに「ここまで」と線を引かないこと


    ●統合マネジメントツールの導入で、うまくいく企業とそうでない企業が分かれる印象があります。両者に明確な違いはあるのでしょうか?

    私達のお客様である代理店にお伺いしてきた中で実感していることは、代理店のご担当者が「現状をよくしたい」と真剣に考えていらっしゃる場合は、導入が前に進みやすいです。労働集約型になってしまいがちな運用型広告の構造を変えたいですとか、システムを漫然と導入するのではなく、最適なサービスを提供するには、現状のワークフローをどう変えていくべきかと考えている方がご担当者ですと、導入が目的ではなく運用のフェーズに乗るので、活用につながっていくように思います。

    その逆で、単純に「楽になるから」というだけでシステムを導入しようとすると、運用に乗りにくいかもしれません。先述の入札&予算管理(Bid & Budget Management)のような自動化機能はもちろんあるのですが、代理店様の強みを発揮しやすいように様々な機能があるので、「その代理店様である理由」を、ツールを通じて構築して頂くお手伝いができればと思っています。


    ●統合マネジメントツールを使っていく環境において、運用担当者に必要な知識やバックグラウンドはあるのでしょうか?

    運用はこの分野の価値そのものなので、いわゆるテクノロジーの知識、分析の知識、マーケティングの知識、いずれも不可欠だと思います。マーケティングというと大げさですが、シンプルに言えば、ユーザーが何を考えて、何を欲しているのかを読み取り、どういう情報を提供できるかを考えて広告を運用する能力ですね。

    違う言い方をすれば、そういったことを考えながら仕事をしないと、楽しくないですよね。楽しくないから続かなくなりますし、細部へ気が回らず、大雑把にまわして終わってしまいがちなのかなと思います。マーケティングへの興味がないとできない仕事かもしれません。

    あと少し障壁が高いのか、テクノロジーに対して「これ以上はいいや」と、どこかで自分で線を引いてしまうと非常に勿体ないと思うことがあります。例えば、「タグが入っているので計測できる」というところまでに留まってしまい、それがどういう仕組みで動いているのかを知ろうとしない、といったことです。Javascript という単語は知っていても、それがどういう挙動で計測につながるのかには興味が及ばない。

    もし興味があって、ある程度の知識があれば、このタグを少し工夫すると、実はこういうターゲティングもできるのではないかと新しい施策が考案できたり、すぐ消えていってしまうフラッシュアイデアを本当に形にできたりするのではないかと思います。例えば、「これから Cookie が使えなくなるかもしれない」といった議論があったときにも、何が影響を受け、何が影響を受けず、どう対応すべきか、また代替としてどのような技術があるのかに想像が及んだり、先回りして顧客と議論したり提案することができます。

    みんながみんな技術的なバックグラウンドがあるわけではないので個人差があって当然ですが、興味さえあれば詳しい人に聞くことも出来ますし、一緒に仕事をしていく上で新しいアイデアを生むことができると思います。ほんの僅かの差、知ろうとする姿勢(知的好奇心)がこの分野で競争力を高めていく上で大事なのではないかと思います。

    このように、マーケティングとテクノロジーが個人の中で融合することが、本当に面白い世界を生み出せることにつながるため、今後そういう人材へのニーズが増えるし、何よりもその人たちは本当に楽しい仕事ができる世界になるのではないでしょうか?


    ●そういう人をどのように見出していくべきなのでしょうか。もしくはどうしたらそうなるのでしょうか。

    業界全体がもっと魅力的にならないといけないのかなと思っています。代理店でも採用や教育は難しいと悩んでいらっしゃるケースが多いと思います。

    アクイジオがそこで貢献できることは、オペレーションを手漕ぎからエンジンへ変えていくことです。手漕ぎからエンジンに変われば、当然動かす人に求められる能力や職務が変わってきます。

    求められる職務が変わっていく中で、根っこの仕組みを知っている人は、変化においてステップを踏んでいきやすいと思います。エンジンが搭載されたことによって運用者の職務を奪うのではなくて、運用者がより職務の幅を広げていきやすくすることに繋がるのかなと考えます。


    運用者がちゃんと評価される環境に


    ●運用型広告の今後とご自身のキャリアについてお聞かせ下さい。

    私自身、代理店で仕事をしていく中でずっと「頑張っている人を助けたい」と思って仕事をしてきました。現場の運用者は本当に頑張っているので、ソリューションで彼らを助けられないかと。

    繰り返しですが、運用型広告というくらいですから運用が価値なので、運用している人がちゃんと評価される仕組みを作らないといけません。運用者の市場価値が上がっていかないと、言葉は悪いですが使い古されて辞めてしまう人が出てきかねないと思っています。この業界にいるといろんな経験ができて成長できる、そういう環境にしていくことに少しでも貢献していきたいと思っています。

    あと、運用型広告はオペレーションの視点からコンサルティングの視点へ移行すると考えます。コンサルティング、というと捉えようのないイメージがありますが、これだけたくさんのデータが取れる世界なので、データをより高度に分析して、効果的だったりチャレンジングな施策を創作して、次のアクションへフィードバックしていく力を付けなければいけません。例えば、検索であれば検索クエリがユーザーのモチベーションを表わしているように、データという宝がたくさん眠っている世界なので、その宝をうまく活かして企業の発展に貢献できる仕事だと信じています。


    ●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


    アクイジオジャパン株式会社
    http://www.acquisio.co.jp/

    リスティング広告(特にAdWords)チェックリストまとめ

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    運用型広告とチェックリスト

    運用型広告の運用者の多くは、単に設定やレポートをするというより「企画→設計→入稿→運用→報告→改善」という一連の業務の流れで主体的な役割を担うことが多いと思います。カバーする業務が多いため、業務上必要なTODOはどうしても肥大しがちです。

    広告クリエイティブ、キーワードなどの主要素をはじめとして、多くの設定・入力項目がありますし、CPAやROAS、アトリビューション分析など、数えればきりがないほど様々な要素や指標が分析対象となるため、TODOを確実に実行するためのチェックリストを作成している企業も多いと思います。

    こういったチェックリスト化は避けられない一方で、運用型広告の結果は、ある要素が単一的な原因として特定されることはほぼなく、複数の項目が複雑に絡み合った結果であることが非常に多いため、チェックリストは最低限の事故を防ぐ効果はあっても、その導入によってたちどころに成果が上がるということは考えにくいのが現状です。チェックリストによる「形骸化」「思考停止」「硬直化」「ドキュメントや報告業務の増加」といった弊害は、システム開発の現場で時折指摘されますが、運用型広告でもそれは同じでしょう。

    とは言っても、始めたばかりの運用者にとってはチェックリストはありがたい存在ですし、ベテラン運用者の慢心を戒める効果もあるかもしれません。企業の体制にあったチェックリストや業務フローの作成は、ある程度の規模のアカウント数を扱う企業には避けては通れない問題であるのも事実です。

    そこで、今回は運用型広告の代表格であるリスティング広告(海外のものなので AdWords ばかりですが…)のチェックリストをまとめてみました。何かのご参考になれば幸いです!


    (1)Unbounce のアドワーズチェックリスト

    The Definitive AdWords Audit Guide [with Interactive Checklist] | Unbounce


    A/Bテスト・ツールの Unbounce が紹介しているチェックリストです。ページにチェックボックスがついていて各項目の点数を集計してくれるという仕様になっています。

    内容としてはシンプルで、大項目が「キャンペーン」「広告グループ」「キーワード」「ランディングページ」「分析」と分かれており、どれも実用的な項目が揃っています。新しいキャンペーンを配信する前や、誰かのアカウントを引き継いだ際、定期的な見直しのタイミングなどに使いやすいかもしれません。



    (2)Google のモバイル広告成功のためのチェックリスト

    Inside AdWords: The Google Best Practices Checklist for Mobile Success


    Google が以前から定期的に出しているベスト・プラクティスシリーズに、モバイル広告の最適化チェックリストがあり、上記のURLからダウンロードできます。チェックリスト自体は14項目とシンプルですが、各項目の説明にヘルプや便利サイトへのリンクが貼られているので、参照するのに非常に便利なつくりになっています。クリエイティブに多くの項目が割かれており、モバイルにおける広告設定や表現の重要さが強調されていますね。

    ちなみに、Search Engine Land と協働した Google AdWords Solution Center - AdWords Best Practices Seriesというものがあり、こちらにもドキュメントが多数格納されています。



    (3)PPC Hero の初心者向けアドワーズ最適化チェックリスト

    The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization


    リスティング広告専門記事が揃っている PPC Hero のチェックリストシリーズです。「The Beginner’s Checklist of What To Do in the First Month of Your AdWords Optimization」という名前のとおり、最初の1ヶ月でやるべきことリストが説明付きで載っています。

    記事自体が長いので、以下の全3回に分かれています。

    The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization: Part 1
    The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization: Part 2
    The Beginner's Checklist for the First Month of Your AdWords Optimization: Part 3

    Part1 では「24-Hour Review」と題して、アカウントを立ち上げてからすぐのタイミング(当日ー翌日)の確認事項について細かく触れています。Part2 では、一週間経ったあとのプチ最適化(順位、予算、CPC、広告、除外キーワード等の調整)について、最後のPart3 では、二週間以後に本格的にデータが溜まってきた際の対応が細かく記載されています。



    (4)WhiteSharkMedia のチェックリストインフォグラフィック

    The Ultimate Checklist on How to Optimize Your Google AdWords Campaign in the First Month [Infographic]


    上記の PPC Hero のコラムを書いている White Shark Media が提供しているインフォグラフィックです。「The Beginner’s Checklist of What To Do in the First Month of Your AdWords Optimization」の3回のシリーズで書いた内容をまるごと(つまり1ヶ月分)インフォグラフィックにしていますので、かなり長いです!どうぞ!

    >The Ultimate Checklist on How to Optimize Your Google AdWords Campaign in the First Month – An infographic by the team at WhiteSharkMedia.com AdWords Blog



    (5)日本語のチェックリスト各種

    日本語のチェックリストは少ないのですが、アナグラムさんが Google のドキュメントを翻訳した「広告文改善のための10のチェックリスト」や、ドキュメントが充実している AdWords ビジュアルナビの「効果改善チェックシート」が便利だと思います。

    アナグラム株式会社 | クリックを呼ぶ広告文: 広告文改善のための10のチェックリスト

    効果改善チェックシート - AdWords ビジュアルナビ

    効果改善チェックシート(応用編) - AdWords ビジュアルナビ



    以上です。なにか新しいものが見つかれば、このページで随時紹介していきたいと思います。

    大きく複雑なアカウントになればなるほど、チェックリストだけで改善できるほど単純な世界ではなくなりますが、「忙しくて手が回らない」とか「引き継いでから事故が多発」みたいな状況では、チェックリストは大きな威力を発揮します。

    いいドキュメントが適切に活用できれば、日々のワークフローは確実に改善するはずです。自社でのチェックリスト作成のご参考になれば幸いです!


    2014年10月3日追記:
    Google から、年末に向けてのEコマース向けチェックリストが出ていました。(リンクはPDF)
    services.google.com/fh/files/misc/holiday-shopping-checklist.pdf


    リスティング広告をもっとクールな仕事にしていきたい – アナグラム 竹内まさる氏・田中広樹氏 #State-of-AdOps Vol.13

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    「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

    ※過去の記事はこちらから。

    第13回目は、リスティング広告運用では今や最も有名な会社の一つであるアナグラム株式会社で広告運用の現場を牽引している、竹内まさる(たけうち まさる)さん、田中広樹(たなか ひろき)さんのお二人に、運用型広告の現状や今後の展望について、忌憚のないお話をお聞きしました。


    # インタビューは 2014年8月某日に行われました。


    正しいことで世の中に影響を及ぼしたければ、それなりの規模でやらないとダメだ。


    ●まずは、お二人が現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

    竹内:アナグラムの竹内です。アナグラムでは、弊社でお預かりしているアカウントの構築から運用までを見る、広告運用全体の責任者を務めています。チームメンバー、社内では「クルー」と呼んでいますが、彼ら彼女らと共にお客さまに成果をお返ししながら、クルーのみんなのスキルアップも同時に実現していくことがミッションです。

    現在は23歳で、1年間大学を休学していたので実はまだ大学4年生です。アナグラムには、2012年の夏から参加しています。3年ほど前にTwitterを通じて自分と同じような年齢の人が既に事業をしていることを知って刺激を受けたのですが、多くの学生がやっているソーシャルメディア関連の仕事ではなく、堅調に伸びてきているSEMをやろうと、最初はアナグラムとは別の企業で初めてSEMに触れました。

    独学で学んでいた時に参考にしていた「SEM-LABO」という代表の阿部のブログでアナグラムが社員を募集していることを知って、インターンとして働けないかと直談判して、その後社員に登用してもらい、今に至ります。

    田中:アナグラムの田中です。アナグラムでは、リスティング広告の運用をしながら、社内のインフラやレポート整備など、クルーがお客さま以外のことで余計な時間を使わなくて済むように支援することを役割としています。

    もともとはNHKで放送のエンジニアだったのですが、テレビがアナログから地上波デジタルに移行することで、元々やりたかった放送系の仕事が減ることが分かった段階で、今後30年間もやりたい仕事ができないのであれば自分の興味が湧くような別の仕事をしてみたいと思い、ウェブの業界に転職しました。

    2009年にリスティング広告の代理店に入社し、3年ほどリスティング広告の運用や自動入札ツールをはじめとするソリューション周りの導入支援などを経験したあと、縁があって代表の阿部に声をかけてもらい、2012年の1月にアナグラムに社員第一号として入社しました。


    ●アナグラムさん、ここ最近急拡大している印象があります。

    田中:アナグラムが阿部の個人事業から会社としてアクセルを踏んでいく少し前のタイミングで二人とも入社し、3人で業務展開をしていました。今は社員が二桁になったので、ずいぶん増えたなあという印象です。

    竹内:気付いたら増えていましたね。以前浅草橋にオフィスがあった頃はもっとマイペースで仕事をしていたように思いますが、阿部がどこかで「正しいことを世の中に広めるには、それなりの規模でやらないとダメですよ」と言われたみたいで(笑)、私も「そうだそうだ」と煽ったせいか、事業のスピードがそのあたりから急に変わったように思います。


    10人の頭で、1つのアカウントを見る


    ●お二人とも他社でリスティング広告を経験した上でアナグラムに参加されていますが、他の会社とアナグラムが違うところってどこでしょうか?

    田中:他の代理店さんでも似たようなところは多いと思うのですが、前職では一人で何十アカウントも担当することが常態化していました。寝ている間も休みの日でも常に広告は出ていますし、どうしてもすべてのお客さまへ対応することが難しくなりますので、常にストレスに晒されているような状態になります。「こんなに厳しい業界なのか…」と途方に暮れたこともありました。

    一方で、アナグラムであれば、一人で担当するお客さまがある程度絞られるので、1社1社にじっくりと対応することができます。また、周りにプロフェッショナルが多いので、そばにいながら学ぶことができるのは大きなメリットだと思います。

    竹内:私も、田中さんと同じく学びが多い環境があることがアナグラムの良さの一つだと感じています。以前から実施しているグロースハックという取り組みがいい例ですが、10人の頭で1つのアカウントを分析したり構築するような試みなので、1人では思いつかなかったアイデアが生まれたりしますし、それだけさらに成果が上がっていく可能性があります。様々なアカウントやビジネスを見る機会に恵まれるので、トレーニングの効率としてもいいと思います。

    あとは、その副次効果としてかもしれませんが、業務効率がよくなるので文化的な時間に帰宅できることでしょうか(笑)。

    田中:確かに、早く帰れますね。広告代理店の場合、終電で帰るような場面も多いと思いますが、アナグラムでは残業はかなり少なく、定時に帰ることも多いです。

    個人ではなくチームで成果を上げるためのグロースハック


    ●それは一般的な広告代理店からしたら夢のような環境ですよね。ぜひその秘訣を教えて下さい(笑)

    竹内:いくつか挙げられると思いますが、まず、「責任の取れる範囲でのみお仕事をお受けしている」のが大きいと思います。他社さんと比較しても、一人が担当するアカウント数は少ないと思います。その分じっくり対応することができます。

    田中:よく「PPPPPDCA」なんて言いますが、プランニングにちゃんと時間をかけます。先ほどのグロースハックもしかりですが、しっかり考えぬいた上でアカウントを構築すれば失敗するリスクを抑えられますし、運用もスムーズに軌道に乗ります。

    竹内:コミュニケーションを促進するような制度があることも一因かもしれません。社員にはランチ代が支給されるのでみんなで一緒に出掛けることも多いですし、協力する文化がありますね。あと、なるべく上司から先に帰るようにしているのも大きいかもしれません。帰りが早いぶん朝が早いと言われることもありますが、9時までに出勤なので特別朝が早いわけではないです。


    ルールを知らないと、戦えない。


    ●では、少し話題を変えて、リスティング広告とテクノロジーについてお聞きします。リスティング広告に代表される運用型広告は、技術の進化によって自動化できる部分とそうでない部分がはっきりしてきたように思いますが、そのあたりのバランスはどう捉えていますか?

    田中:リスティング広告の機能自体が複雑になっているので、人間の頭では追いつかない領域まで達してきているように感じています。プラットフォーム側はテストを繰り返しながらよかれと思って機能をリリースしているはずなので、それを使う使わないは別として、「どういう意図でこの機能があるのか」「どういった仕組みでこの機能は動いているのか」を理解する姿勢が運用担当者には必要だと思います。

    新しい機能が出たら、その仕組みや目的を明確に理解した上で使うか使わないかを判断する。その「判断ができること」が非常に大切だと思います。リリースされた機能を無批判にすべて使う必要はないですし、テクノロジーに依存するのではなく、理解した上で寄り添うことが重要だと感じています。

    竹内:弊社では新しい機能を積極的に試すことが多いのですが、必ずしも毎回よい結果が出るとは限りません。ただ、試さないと理解できないですし、ナレッジとして溜まっていかないので、今後もお客さまと一緒にトライできる環境づくりを進めていきたいと思っています。


    ●新しい機能や仕組みが出てきたときは、どのように対応していますか?

    竹内:大抵の場合、田中さんが噛み砕いて分かりやすく説明してくれます(笑)。背景や仕組みを理解したうえで、私が現場に浸透させていくことが多いです。

    田中:しつこいようですが、知ろうとする姿勢が大事だと思います。「あれ、結構いいらしいよ」と誰かが試すのを待っているのではなく、自分で仕様を理解して、どう設定するとどうなるのか、どういう場面ならフィットするのか、仮説を立てながら自分で試すことですね。「新機能が出ました!」と機能だけを提案してもあまり意味はないですから。


    ●技術的なバックグラウンドを持たない人も多いと思いますが、まずはどういったところから学んでいくとよいと思いますか?

    田中:リスティング広告であれば、まずはヘルプに目を通すことでしょうか。ヘルプはリスティング広告におけるルールブックのようなものなので、新機能やテクノロジーの議論をする前に、ルールを知っておくことが大事だと思います。新しい機能が出た時には、ヘルプを読むだけではなく、ルールをちゃんと理解した上で新しい機能がルールの上でどう作用するのかを確認する、といったイメージです。

    もちろん、情報処理のバックグラウンドはあるに越したことはないかもしれません。ただ、順位や課金のような根本のルールは変わりませんから、まずはその根本を正確に掴まないと、テクノロジーの理解だけがあっても、戦えないと思います。

    ヘルプ以上のことは世の中に書いてありませんので、ルールを知ることが本質を知ることにつながると思います。その上で、ノウハウやテクニックを乗せていけばいいのではないでしょうか。

    竹内:最近はリスティング広告関連ブログも増えてきたので、新機能をレビューしたような記事も多くありますが、単にそれを鵜呑みにするのではなく、自分たちで確かめる習慣をつけるようにしています。

    間違った理解のまま発信しないように、アナグラムのブログでもしっかり確かめてから記事にするようにしていますね。

    田中:最近は、お客さまとの定例会で月次のご報告だけをすることは少なく、タグマネジメントやアクセス解析など、技術と関わりのある話に時間を割くことが多くなってきました。この仕事は、「リスティング広告のコンサルティング」から、「ウェブ戦略のコンサルティング」のようになるのではないかと思っています。


    リスティングを、もっとかっこいい仕事にしたい


    ●リスティング広告の今後について、展望などがあればぜひ教えて下さい。

    竹内:リスティング広告がインターネット広告の中心的な役割であるのは変わらないと思いますし、我々もそこを強みにしていくのは変わらないと思います。

    あとは、パイの奪い合いをするのではなく、市場を拡げていく役割を担いたいと思っています。もうすぐリリースになるIMACARA(イマカラ)のように、店舗型ビジネスの力になることもできますし、スマートフォンを利用した集客としても、リスティング広告はまだまだ多くの可能性があるはずだと思っています。

    IMACARA(イマカラ) 店舗型ビジネス向けの集客支援サービス


    ●個人として今後の目標があればお聞かせ下さい。

    田中:リスティング広告が来年どうなっているかすら分からないほど、最近は進化のスピードが早まっていると思います。クルーのみんながキャッチアップできるように、社内ではなくお客さまにちゃんと向き合えるように、主に技術面で引き続きサポートしていきたいと思います。

    竹内:求められた成果を出していくだけでなく、ご担当者さまが昇進されたり、お客さまのビジネスが弊社とのお取引を通じて伸びていくお手伝いをしていきたいと思っています。

    また、リスティング広告は10年以上成長し続けている分野にも関わらず就業環境があまりよくなく、人が集まってくるような状況にないのではないかと感じています。就職希望の学生がひっきりなしに集まってくるとか、あの業界にいけば輝けるらしいとか、とにかく、リスティング広告をもっとクールな、かっこいい仕事にするために、出来る限りの貢献をしていきたいと思っています。


    ●本日は貴重なお話、ありがとうございました!


    アナグラム株式会社
    http://anagrams.jp/


    IABがプログラマティック・ダイレクト取引の標準APIを公開

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    OpenDirect 1.0 の発表


    2014年11月3日、IAB(Interactive Advertising Bureau)は ニューヨークで行われていた AdOps Summit 2014の場で、プログラマティック・ダイレクト(プログラマティック・プレミアム)と呼ばれる広告在庫予約型固定単価取引の標準API である「OpenDirect 1.0」を発表しました。



    IAB Releases OpenDirect 1.0 For Public Comment of Specification That Provides Publishers Greater Control in Packaging, Buying and Selling Premium Inventory Through Programmatic


    「OpenDirect 1.0」は、プレミアム在庫の自動取引のプロトコル(取引手順)を標準化することで、売買を行うセルサイド、バイサイド双方にとって信頼性や効率を強化する目的で発表されたもので、約1年前である2013年9月に AOL、マイクロソフト、ヤフー、Yieldex(後にMediaMathなども参加)によって結成された標準化ワーキンググループの活動が結実したものだと言えます。

    この仕様によって、パブリッシャー(メディア)には以下のようなメリットがあるとされています。

    ・ワークフローの効率化の促進
    ・広告在庫の配信やプライシングなどの管理強化
    ・取引自動化の信頼性強化


    多くのパブリッシャーが参加することで、代理店や広告主にも以下のようなメリットがあります。

    ・データの流動性や鮮度の担保
    ・複数メディアを1つのAPIで取引できることによる効率化
    ・アドエクスチェンジではアクセスできないプレミアム在庫の予約




    APIのドキュメントは既に公開されており、102ページにも及んでいます。


    リンク(PDF):www.iab.net/media/file/OpenDirect_V1.pdf

    高まるプログラマティック・ダイレクトへの期待



    eMarketer によると、プログラマティック・ダイレクトは、ディスプレイ広告のプログラマティック取引の中でも最も伸びる分野だと捉えられており、オープンRTBと比べてまだ規模は小さいものの、年率数倍の成長カーブを描き続けると予測されています。

    US Programmatic Ad Spend Tops $10 Billion This Year, to Double by 2016 - eMarketer


    プログラマティック取引の種類については、プラットフォーム・ワンさんの以下のページ、もしくは対談シリーズ「State of AdOps」でも詳述されています。ぜひご一読下さい。

    プログラマティックと自動取引 -媒体社の視点から- | プラットフォーム・ワン 

    テクノロジーが、パブリッシャーの武器になる −プラットフォーム・ワン 田辺雄樹氏 #State-of-AdOps Vol.10 ~ admarketech.


    現在のアドテクノロジー分野は、中間のプレイヤーの乱立→合従連衡という過渡期にあることで、プロトコルが複数存在し、スケールメリットが出しにくく事業者の開発工数が肥大しがちなことが、今回の標準化を要請したものと思われます。

    この標準化にどれだけのプレイヤーが参加するのか、巨人は動くのか、しばらくは見守っていく必要がありそうです。


    Googleがアドワーズの入札自動化チェックリストを発表

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    入札自動化のチェックリスト

    Google が以前から定期的に出しているベスト・プラクティスシリーズに、入札の自動化についてのチェックリストが加わりました。完全版とダイジェスト版があり、それぞれ以下のURLからダウンロードできます。


    リンク:Inside AdWords: Unlock the Power of Auction-Time Bidding in AdWords 

    完全版:services.google.com/fh/files/blogs/google-automated-bidding-best-practices.pdf

    ダイジェスト版:services.google.com/fh/files/blogs/google-automated-bidding-checklist.pdf


    チェックリストは10項目と非常にシンプルですが、入札の自動化の基本から解説、導入までのステップなどが丁寧に書かれており、非常に親切なドキュメントになっています。

    特に考え方から導入までに多くの項目が割かれていることから、入札の自動化における勘違いや不適切な運用が多いことが推察されますね。

    以下、ダイジェスト版を抄訳してみましたのでご参考下さい。


    すべてのオークションごとへ入札

    〜アドワーズの自動入札を導入し、活かしていくためのチェックリスト〜

    (1)ユーザーの文脈に合わせて入札すること。つまり、可能な限りオークションが発生するごとに入札するということ。


    (2)自動化の本当の価値を理解すること。それによって時間を節約する。


    (3)ビジネスの目的に沿った入札戦略を選択すること。


    (4)正確なコンバージョンデータを基に入札を自動化すること。


    (5)パフォーマンスのあるキーワード群を体系化し、入札ポートフォリオを設計すること。


    (6)テストしやすい大きなキャンペーンを選択すること。


    (7)これまでの実績(CPA/ROAS)に沿った設定でスタートすること。


    (8)テストはシンプルに。一貫した1つのKPIをテストすること。


    (9)頻繁にテストや設定を変えないこと。


    (10)実績が極端に変化した際は技術的な問題や実装の問題の可能性が大きいので、可能な限り迅速に対応すること。




    自動入札について考える

    余談ですが、今回の記事では「自動入札」ではなく「入札の自動化」と表記しました。「自動入札」は、一般的にサードパーティのトラッキングシステムから判断したデータに沿ってプラットフォーム側に上限入札単価の変更を自動的に命令する仕組みを指すことが多いですが、このベストプラクティスで表現されている「Automated biddng(Auction-based bidding)」言葉は似ていますがニュアンスが微妙に異なるのではないかと考えています。

    わざわざ、「オークションごとの入札変更」と表記していることからも、単に結果だけを見て上限入札単価を機械的に変える一般の「自動入札」とは意味が異なることを示唆しているように思います。オークションごとに判断できる様々なシグナル(デバイス、時間、場所、履歴、ユーザー属性等)に沿ってプラットフォーマー側で実入札を判断する仕組みは、オークションごとの判断である以上サードパーティでは実現不可能なことです。

    チェックリスト(完全版)にある図を拝借すると、以下のようになります。正確で充分な量のデータがあるキャンペーンで一定期間 KPI に合わせて実施できれば、単純に CPA に合わせて上限入札単価を上げ下げする運用より成果が出るのは当然のようにも思えます。
     

     

    一方で、この考え方は精度や頻度は圧倒的に高い反面、プラットフォーマーに異存するというリスクもあります。欧米のような Google が独占的な市場では判断を待たないかもしれませんが、沢山のチャネルを活用している大規模広告主にとっては経営判断が必要な部分でもあります。どちらがいいというものではありませんが、自動化をはじめとして、テクノロジーに寄り添いながら運用効率を高めていくことが今後の運用者には必須の能力になっていくでしょう。

    マニュアルの入札業務が減っていく反面、入札ポートフォリオを設計する能力(≒アカウント構築能力)はますます価値が高まっていくと考えられます。
     

    その他のベストプラクティス

    なお、Google はこれまでも幾つかのベストプラクティスを発表しています。こちらのURLに一覧になっていますのでご参照下さい。

    リンク:Google Best Practices - AdWords Help


    AdWords以外のチェックリストは、以前の「リスティング広告(特にAdWords)チェックリストまとめ」もご参照下さい!


    GoogleがRLSA(検索広告向けリマーケティング)のベストプラクティス資料を公開

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    RLSA(検索広告向けリマーケティング)資料

    先日のアドワーズ入札自動化チェックリストに続き、アドワーズのベスト・プラクティスシリーズに、RLSA が加わりました。

    以下の URL から PDFファイルをダウンロードできます。


    リンク:
    Inside AdWords: Winning the Second Chance with Remarketing Lists for Search Ads (RLSA)

    PDF:
    services.google.com/fh/files/misc/google-winning-the-second-chance-rlsa-best-practices.pdf


    この資料は大きく分けて「設定(Set Up Smart)」「セグメント(Segment Your Prospect)」「入札(Bid For Success)」に分かれており、それぞれに詳細な説明もしくはかんたんな事例がついています。

    設定(Set Up Smart):タグマネージャーを利用することによってコードの管理変更をウェブマスターからマーケターに移管し、施策の即時性を上げる有用性が説明されています。Google Tag Assistantも紹介されています。

    セグメント(Segment Your Prospect):ディスプレイ向けリマーケティングと違いリストが1000以上必要なことが言及されているほか、代表的なリストである「訪問者全体」「カート放棄」「直近の購入者」について説明されています。組み合わせリストにも触れています。
    また、ターゲティングである「掲載先の絞り込みと入札単価」「入札単価のみ」についても、以下のような比較表で使い分けが説明されています。



    入札(Bid For Success):RLSA の対象になるリストについては、見込み顧客である可能性が高いことから、入札を引き上げることを推奨しています。また、一般によく言われるように意味の広いキーワードやマッチタイプを広げて入札することも勧めています。


    その他の RLSA 関連資料

    今回のベストプラクティス資料は、非常にシンプルな作りになっています。正直「もっといろいろやってます」という感想を持つアドワーズ関係者も多いのではないでしょうか。RLSA の応用にはアイデアと戦略が必要なため、どうしても最大公約数的な資料になってしまうのは否めないかもしれません。

    RLSA は日本語の事例や資料も充実しています。まだの方はご一読を!


    検索広告向けリマーケティング(RLSA)の概要と設定方法 - AdWords ビジュアルナビ

    アナグラム株式会社 | 「どのキーワードに出す?」から「誰に出す?」で大きく成果が変わる、検索広告向けリマーケティング(RLSA)の解説と設定方法

    Inside AdWords-Japan: 3 つの Google サービスで検索広告を完全自動化 - 運用コストの低減とコンバージョン数の拡大に成功

    アナグラム株式会社 | 「どのキーワードに出す?」から「誰に出す?」で大きく成果が変わる、検索広告向けリマーケティング(RLSA)の解説と設定方法


    なお、Google はこれまでも幾つかのベストプラクティスを発表しています。こちらのURLに一覧になっていますのでご参照下さい。

    リンク:Google Best Practices - AdWords Help


    AdWordsの共有ライブラリ「入札戦略」レポートが刷新

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    共有ライブラリの「入札戦略」がアップデート

    AdWords の共有ライブラリにある「入札戦略」がアップデートされました。今までより使いやすくなっています。


    参考:Better reporting on your flexible bid strategies starts now(Google+)


    今回新たに改良された点は大きく分けて以下の2つがあります。


    (1)通常のキャンペーンと同様のグラフおよびサマリーが追加

    (2)「入札戦略ステータス(bid strategy status)」が追加


    今回の変更によって、入札戦略ごとの推移や比較を視覚的に確認できるようになるほか、各入札戦略のステータスが分かるようになるため、特にコンバージョン最適化系の入札戦略(目標CPA、目標ROAS、拡張CPCなど)がどういった状態にあるか把握できます。

    ビジュアルで比較できるようになったことも意義がありますが、今回は(2)の入札戦略ステータスの確認ができるようになったことが大きいと思います。例えば、コンバージョンデータが少なく機械学習の途中(最適化がまだ十分でない段階)では、ステータスは「learning」(※)と表示されるため、現在の入札戦略のデータが十分かどうか、最適化された上での結果なのかどうかを判断することができるようになります。

    共有ライブラリの「入札戦略」はこれまで積極的に使われている印象がありませんでしたが、今回のアップデートによって使う意味が出てきたように思います!


    ※ステータスの一覧はこちらのヘルプページにあります。
    入札戦略ツールを使用する - AdWords ヘルプ

    ショッピングキャンペーンの6つの更新(2014年11月)を考える

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    商品リスト広告や動的リマーケティングなど、ショッピング周りのアップデートが絶えない Google AdWords ですが、感謝祭からブラックフライデー、そしてクリスマスシーズンに突入する直前の11月下旬という1年で最もEコマースが盛り上がる非常に大事な時期に、幾つかのアップデートが同時に発表されました。

    今回は主に分析や指標周りの更新が多い印象です。公式ブログの説明を参考に、今回のアップデートがどのように運用に活かせるのか考えてみたいと思います。


    参考:Inside AdWords: New ways to rev up your Shopping campaigns


    今回のアップデートは、かんたんにまとめると以下の6つになります。

    ショッピングキャンペーン

    ・「オークション分析」機能の追加
    ・「検索広告のインプレッションシェア」の精度が向上
    ・「オークション分析」でデバイスと時間の分割が追加
    ・「入札単価シミュレーション」項目が追加
    ・商品グループ単位でのソート機能の追加

    マーチャントセンター

    ・「診断」タブの導入

    以下、順に見ていきたいと思います。


    ①「オークション分析」機能の追加

    キャンペーン、もしくは広告グループの「詳細」から「オークション分析」を選択すると、他の検索連動型広告キャンペーンと同様のオークション分析レポートが確認できます。




    このオークション分析には「インプレッションシェア」「重複率」「上位表示シェア」という新たな3つの項目が追加されています。

    「重複率」は、該当するショッピングキャンペーンの広告にインプレッションが発生した際に、同時に他の広告主の広告が掲載された割合で、「上位表示シェア」は、オークションに参加した他の広告よりも自社の広告が上位に掲載された、もしくは他の広告が掲載されずに自社の広告が掲載された割合のようです。

    残念ながら現時点では広告グループより細かいレベルではレポートが出ませんが、商品グループと広告グループがある程度揃っていれば強いカテゴリと弱いカテゴリはある程度分析が可能かと思います。ベンチマークCPCなどと照らし合わせながら、入札とマーチャントフィードの両面から施策を練ることができるようになりました。

    また、あとの項目でも触れますが、このオークション分析レポートは期間とデバイスで分割が可能ですので、デバイスごとの成果を見ながら入札の強弱を設定する根拠としても使えそうです。


    ②「検索広告のインプレッションシェア」の改善

    検索広告のインプレッションシェアの項目は、これまではキャンペーンレベルでの確認でしたが、今後はより細かいレベル(IDレベル)での確認ができるようになりました。




    通常の検索連動型広告と同様のレベルで確認が可能になります。運用自体はこれまでと変更はありませんが、変化の原因が広告ランクなのか予算なのかが判断しやすくなります。なお、今回の変更によって10月と比較してインプレッションシェアが変化している可能性があります。


    ③「オークション分析」でデバイスと時間の分割が追加

    オークション分析レポートは期間とデバイスで分割が可能になったため、デバイスごとの成果を見ながら入札の強弱を設定する根拠としても使えそうです。

    土日にモバイル経由のクリックが増える、といった傾向もより掴みやすくなりますね。



    ④「入札単価シミュレーション」項目が追加

    商品グループタブの表示項目に、「入札単価シミュレーション」が追加になりました。通常はマウスオーバーして表示させる入札シミュレーションが、表示項目として利用できます。

    これはちょっと Google にしてはいやらしいというか、外連味のある更新だと思います。商品リスト広告はSERPに表示できる広告ユニット数が限られている広告のため、「インプレッションが出ない」という相談が多いのですが、マーチャントフィードの改善でどれだけインプレッションが増えるかは未知数のため、どうしても入札で補完しに行きがちです。

    レポート項目として追加されたことでデータとしては扱いやすくなったので、どうしてもショッピングキャンペーンのトラフィックを増やしたいときには参考になる反面、オークションの加熱を大っぴらに奨励しているようで、ハイシーズン前とはいえ随分とあけすけですなあ、という印象も持ってしまいますね。




    ⑤商品グループ単位でのソート機能の追加

    商品グループ単位の表示形式にフラットビューが追加されました。これを選択すると、これまで項目ごとのソートが階層ごとに表示されていたものが、広告グループ内の商品グループを跨いでフラットに表示されるようになります。

    これは表示形式の更新なので直接的にキャンペーンへの影響はありませんが、各項目ごとに該当する商品グループがひと目で分かるようになりますので、これまでより格段に分析がしやすくなります。個人的には一番ありがたいアップデートかもしれません。




    ⑥「診断」タブの導入

    このアップデートだけ、ショッピングキャンペーンではなくマーチャントセンターの変更です。「診断」タブによって、マーチャントフィードや商品アイテムに関するレポートを一覧でき、商品データの不備、有無、重要なエラーへの対処がしやすくなります。

    また、商品アイテムのステータスを過去にさかのぼって確認したり、不承認となったすべての商品アイテムとその原因が記載されたレポートのダウンロード、統計情報なども確認できるようです。


    参考:Inside AdWords-Japan: Merchant Center の [診断] タブで問題解決がよりシンプルに


    他にも、マーチャントプロモーションが米国以外の国(日本は含まれず)にも公開されるなど、2014年の Google のショッピング関連の更新は昨年に続いてかなり頻度が高かった印象です。(まだあるかもしれませんが…)

    ショッピングキャンペーンを始めとした商品フィード広告の進化は今後も引き続き続いていきそうです。商品リスト広告の市場規模はこの2年で急激に拡大していますので、今後も重要なアップデートがあれば継続的に記事にしていきたいと思います!


    広告インベントリを生み出せるのは、メディアだけです。 –オールアバウト小林秀次氏 #State-of-AdOps Vol.14

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    「State of AdOps」は、現在急速に伸びている運用型広告の成長を支え、実際の現場で価値をつくりだしている広告運用(AdOps)のスペシャリストたちに焦点を当てるインタビューシリーズです。広告運用の最前線にいる方々が感じていることを語って頂くことで、運用型広告の輪郭を少しでも捉えることができればと考えています。

    ※過去の記事はこちらから。

    第14回目は、専門家によるコンテンツが充実し、歴史あるメディアである All About を運営されていると同時に、アドテクノロジーへも積極的に取り組んでいらっしゃる株式会社オールアバウトで広告運用周り全般をマネジメントされている小林秀次(こばやし しゅうじ)さんに、メディアとしての広告運用やマネタイズの現状について、忌憚のないお話をお聞きしました。


    # インタビューは 2014年10月某日に行われました。


    ちゃんとした情報を、手間を掛けて発信し続ける。


    ●まずは、小林さんが現在のお仕事に就かれるまでの経緯と具体的な業務内容を教えて下さい。

    オールアバウトの小林です。専門家による総合情報サイト All About で広告収益となる商品企画全般を担当しています。

    オールアバウトに入社する以前は、インターネットでもメディアでもない、通販企業で雑誌編集の仕事をしていました。取材、撮影、台割、コピーライティングなど、商品を魅力的に見せるという仕事を通じて、編集としてのキャリアを積んできました。

    2004年頃になって、通販もインターネットだという流れになり、雑誌だけでなく自社サイトや楽天市場、ヤフーショッピング等に出店するようになりました。私もそれまでの商品コピーを書く仕事から、その売上を伸ばしていくためのメールマガジンやアフィリエイト、SEO、リスティング広告など、徐々に集客や販売促進の仕事を担当するようになりました。

    当時担当していた商品が単価の高い「こだわり系グッズ」だったのですが、その商品を対象とした広告出稿で、All About が最も高いコンバージョン率だったことが分かりました。元々は代理店がメディアプランに入れていた程度だったのですが、その結果を知って All About というメディアに興味を持ちました。「メディアが面白いんじゃないか?」と思ったんですね。


    ●そこから「じゃあ転職しよう」というのがすごいですね。

    ECサイトをやっていると、インターネットは様々な数字が見られることを肌で感じることができます。インターネットにはメディアも情報もどんどん溢れるようになる中で、All About は人(専門家)にファンがついているアナログっぽいメディアでした。広告出稿して効果が高かったのも、情報の信用度が高かったからです。ちゃんとした情報を、手間を掛けて発信し続ける姿勢は、情報が爆発する時代だからこそ価値を出し続けられるに違いない。そう思って転職を決意しました。

    2006年に転職し、当初は All About が新規事業として運営していたECサイトを任され、5年ほど担当していました。その後、元々メディアで働きたくて転職したこともあって、ECサイトが分社化された2011年に All About のメディア事業部へ異動し、広告周りを見るようになりました。そこで最初に担当したのが運用型広告です。

    メディアにとっての運用型広告は、純広告ではない空き在庫をマネタイズする仕事という意味で、当時はYahoo! アドネットワーク(現YDN)さん、マイクロアドさん、Advertising.comさんなど、アドネットワークを活用して純広告以外の枠をいかにマネタイズするかを試行錯誤していました。現在では、純広告、タイアップ型広告など、広告収益がある商品企画全般を担当しています。


    ●かなり幅広い分野を担当されていますね。

    自分の部署の仕事を言い換えれば、広告営業担当のための武器を作る武器屋だと思っています。

    武器屋はただ武器を店頭に並べていればOKではなく、武器の価値を伝えないと使い方が分かりませんし、買ってもらえません。武器の種類を揃えるだけでなく、特徴をしっかり伝えることが大事だと思っています。


    メディアの広告運用には専任の担当者を。


    ●オールアバウトさんというと、伝統的メディアであると同時にアドテクノロジーへも非常に注力されている印象があります。メディア側での運用型広告のお取り組みについて、具体的にどのようなことをされているのか教えて下さい。

    まず、空き在庫のマネタイズは運用の要素がかなり高いです。そういう意味で運用型広告だと思っています。

    我々メディアサイドは、一つのネットワークやエクスチェンジを入れて放置しているわけではないんです。例えば、Googleさん(AdSense / DoubleClick Ad Exchange)を採用したとします。「Google を一度入れてしまえばあとは RTB で勝手にオークションしてくれるからそのままでいい」となるのではなく、データを見ながら毎週・毎日のように運用が発生していきます。

    運用とは、データを見ながらフロアプライスを調整したり、タグを呼び出す順番を変えたりするようなことを指します。他にも、RTB に広告在庫を出す前に、ある事業者との固定取引を優先的にオークションし、そのフィラーとして Google を出す、といったようなことです。

    これはあくまで単純な例ですが、実際には複数社のネットワークを組み合わせ、All About 内に存在する広告枠ごとに個別に分析し、設定を繰り返して収益の最大化を目指していきますので、かなり複雑な作業です。デマンドサイドから見れば鏡の表裏になるわけですが、業務自体はまさに広告運用と言えるのではないでしょうか。


    ●非常に興味深いです。ちなみに複数のネットワークを枠ごとに運用していくのは、片手間ではとても難しいのではとお察ししますが、実際に組織としてはどのように対応されているのでしょうか?

    以前は固定単価のネットワークが多かったのでシンプルでしたが、現在は日々数字が変わるモデルですので、片手間ではとても無理です。収益に直結する大事な業務なので、専門の担当者がおります。

    また、以前のようにネットワーク事業者の担当者とやりとりするだけでよかった時代から、ネットワークの先の DSP などのプレイヤーから直接連絡がくるようになったのも、担当者が必要になった要因の一つです。

    例えば、「ある特定のセグメントのインプレッションを確保したいので、個別のタグを導入できないか?」といった問い合わせは、専門の担当者でないと対応できません。純広告に近い考え方の「プログラマティックプレミアム」というモデルが伸びると言われている中で、RTB を通じて買い付ける DSP の動きが活発なため、通常の広告代理店の商流には乗らない取引も増えてきているような印象です。


    ●なるほど。デマンド側の広告運用からすると、「このドメイン」「このプレースメント(枠)」という指定で買いに行くというよりは、ターゲティング配信した結果を分析していく過程で、よいドメインやよい枠を事後的に「発見」する、というのが感覚として近いのですが、DSP はメディア指定で買い付ける要望が強いということなんでしょうか?

    仰るとおり、広告主さんは必ずしも「All About の枠が買いたい」と思っているわけではないと思います。また、ドメイン指定の場合は、「買いに行く」というより「除外する」用途として使われることの方が多いですよね。

    一方で、DSP の事業者からすると、需給バランスの問題もあると思いますが、どのメディアの結果が良かったのか把握できる立場にあるので、予約型のようなかたちで特定の広告在庫を抑えたいというご要望が発生するようです。「このセグメントにはこのインプレッションが効果がよい」ということが分かれば、多少単価が高くなってもそれ以上の効果を広告主にお返しできますから。

    メディアからしても、もし需要があれば優先的に在庫を抑えることでインプレッションの単価も高くなりますので、収益にもポジティブに作用します。取引形態によってインプレッションの価値が変わることになりますので、やはり専任の担当者は必要ですね。枠を放置することは今のメディア運営ではできません。


    テクノロジーが進んでいるからこそ、人が大事です。


    ●ありがとうございます。次の質問ですが、こういったメディアサイドの広告運用を考える上で、次に発生する問題はブランドとボリュームのバランスではないかと思います。このあたりの調整も専任の方がやられるのですか?

    広告のボリュームを加味するのは非常に大事です。細かな個別対応をし過ぎるとタグが増えすぎてしまってサイトパフォーマンスにも影響しますし、社内的にもリソースもかかってしまいます。

    そのため、プログラマティックプレミアムのような取り組みの場合は、僭越ながら最低限のラインは設けさせて頂いています。呼び出しの順序なども、経営的な側面を考慮しているのは事実ですし、メディアからすればほぼ純広告なので、配信の審査基準もほぼ純広告と同じだと考えています。


    ●お話をお聞きしていると、そういった特別な対応ができる DSP はおのずと限られてくるのでは、と思ったのですが。

    はい、限られてきますね。DSP さんやアドネットワークさんなど、一緒に新しい取り組み、面白い取組みができる企業さんとやり取りすることが増えてきています。


    ●一口にメディアの広告運用と言っても、カバーする範囲が実に広い印象です。

    プライベートディールのようなアライアンスに近いような仕事もあれば、配信面ごとのタグの順序やフロアプライスの変更など、仕事は多いです。

    同じ媒体でも配信面によって結果が大幅に違うということはよくありますし、案件との相性も違います。

    また、ある時期に特定の SSP の結果がすごく良かったとしても、単発的に案件が集中しただけかもしれませんし、翌期も同じように結果がよいとは限りません。

    短い期間の結果だけを見て SSP やネットワークの判断をすることは、利用するプラットフォームをコロコロ変えることに繋がるため、メディアの運用が安定しなくなり、収益向上のヒントも見つかりにくくなります。SSP やネットワークとしても安心して取引できなくなるデメリットもあります。

    そのため、収益性の差異がそれほど大きくなければ、頻繁にスイッチングせず、ご担当者としっかり付き合える企業を選択するよう心がけています。SSP やアドネットワークは、接続している DSP の数で差別化することはもう難しいと思いますので、一緒にパートナーとしてどこまで真摯に向き合えるかが大事ですね。

    デマンド側と同じように、メディアの広告枠も PDCA を回していく必要があります。SSP などのメディア側のプラットフォームが安定していれば、デマンド側との相性を確かめたり、昨対での比較もできるようになりますし、協力して新しい取り組みを行うこともできるようになります。対応が場当たり的にならないためには、同じ未来が描ける事業者さんと長くお付き合いすることが大事です。


    ●メディアの広告運用の最終目的は RPM を上げることだと思うのですが、事業者とお付き合いする上で、RPM 以外に気にかけていることはありますか?

    メディアの運用型広告の売上は RPM×インプレッション数 ですので、RPM 以外で挙げるとすれば、広告在庫の拡大に寄与する活動です。

    メディア側は出稿された結果は分かりますが、出稿前に広告主側にどのようなニーズや傾向があるのかは極端に言えば知ることができません。逆に、デマンド側のニーズが分かれば、我々メディアとしてはニーズに合ったコンテンツを作り上げることができます。

    事業者の方々と情報共有することで、「A という分野の反応が良かったから、もう少し A に関連するテーマの記事を厚くしようか」といった企画につなげることができます。


    データを活用した新しい広告メニュー


    ●メディアとデータの関係についてお伺いします。メディアにとってのデータは、昨今の DMP の盛り上がりや、パブリッシャートレーディングデスクのようなデータドリブンの新たな取り組みにフォーカスが当たるようになって、以前にも増して重要性を増しているように思います。その辺り、オールアバウトさんはどのように取り組んでいらっしゃるのか、可能な範囲でお聞かせ願えれば。

    データ活用に向けて具体的に取り組んでいる事例を申し上げますと、『All About ユーザーディスカバリータイアップ』という広告メニューをフリークアウトさんと共同で展開しています。


    『All About ユーザーディスカバリータイアップ』
    adinfo.allabout.co.jp/download/editorial/userdiscovery.pdf(PDF)



    このメニューをかんたんに説明しますと、All About はたくさんのカテゴリに分かれており、どのカテゴリを閲覧したかというデータを持っています。このデータと、広告主さんの持つ訪問データを突き合わせて、既存ユーザーの含有率が高いカテゴリを選出します。

    既存の含有率が高いカテゴリは潜在ユーザーも多いということになるので、選出されたカテゴリに対して、まだタイアップページに訪問していないユーザーはタイアップ記事へ誘導し、既にタイアップへの訪問履歴があるユーザーは広告主のサイトへ直接誘導する、というメニューです。


    adinfo.allabout.co.jp/download/editorial/userdiscovery.pdfより抜粋


    これは、閲覧データをそのままターゲティングに使うのではなく、広告の商品企画に活かしていこうという試みです。

    以前は「All Aboutのデータを使いたい」というニーズが多かったですが、単なるデータの提供はビジネスとして成立しません。取引として大きくなりにくいという理由もありますが、単にデータサプライヤーとして提供したのでは、我々にとって非常に大事なデータがその後どう使われているのか分からないからです。


    ●この『ユーザーディスカバリータイアップ』は、ある意味パブリッシャートレーディングデスクと言えるような取り組みですよね?

    そうですね。パブリッシャートレーディングデスクというとメディアが自社でデマンド側の広告運用もすべて担うというイメージですが、オールアバウトですべて賄う必要はないと思っていますし、トレーディングデスクとして他社と比肩できるようなノウハウやリソースがあるわけでもありません。

    こういったデータを活用した新しい商品開発を行なっていく上で、信頼できるパートナーとしてフリークアウトさんがいらっしゃったのが、この商品が世に出せた理由でもあると思います。ちなみに、この商品を実際に運用してくれているのは、以前このインタビューにも登場した時吉さんです。

    ●やはり、運用型だからこそ人が大事ということですね。



    広告運用は横展開がしにくいですよね


    ●広告運用というお仕事、続けてこられてどのように感じていらっしゃいますか?

    運用が発生するネット広告メニューはすべてそうですが、やったらやっただけ結果が出て、それが目に見えることがやはり楽しいですね。

    以前は通販の仕事をしていましたが、売上という結果はもちろん分かるものの、コピーが良かったのか、写真が良かったのか、タイミングがよかったのかといった売上に繋がった要素を分析することができませんでした。デジタルはそれが分かります。

    分かったからといって毎回結果が出るとは限りませんが、何かしらの知見は必ず得られます。知見が得られれば次にするべきことが見つかりますから。

    一方で、絶対のセオリーがないことが課題と言えば課題でしょうか。ネット広告は変化がとにかく早い分野ですし、シンプルに横展開できないことが多いです。商品が変われば使うチャネルも結果も変わりますし、ある商品は A という DSP ではいい結果だったけど、B の DSP ではあまり振るわない、ということが頻繁に起こります。アルゴリズムが少し変わっただけで、結果は大きく変わってしまいますしね。


    ●でも周りからは「横展開しなきゃ」って言われますよね。

    言われますね(笑)。

    基本となる考え方や、PDCA を回すワークフローは横展開すべきです。ただ、知見や事例がそのまま別のキャンペーンに適用できるかというと、普通それはできません。素材やメニューに合わせて適切な調理方法が選択できるのが運用の価値だと思いますので。

    横展開の圧力が強いのは、「運用=オートメーション」と勘違いされているケースが多いことが原因かもしれません。「どうせ空き枠だから自動化しなよ」という扱いを受けることも実際はありますし(笑)。ただ、そこに力を入れるだけ入れられれば得られる情報は増えますし、収益性も上がっていきます。運用がマネタイズにとって重要だということを周りからもっと理解を得られるように、努力を続けていかないといけないと思っています。


    インベントリを生み出すことができるのがメディア


    ●得られる情報が増える、というお話がありましたが、やはり運用とデータは不可分の関係にあると思います。メディアの運用でデータ活用などは進んできていますか?

    まさに、これまではメディアが自社のユーザーを把握する方法はアンケートやサンプリングデータが主流でした。最近 DMP が本格的に利用できるようになって、アクセスの全数から類推ができるようになりました。

    DMP の導入によって情報の精度が上がりましたので、運用にフィードバックできる情報が増えています。例えば、「データを見ながらユーザーが求めていることを今まで以上に把握した上でコンテンツが作れる」でしたり、「収益性の高いジャンルのコンテンツ作成に力を入れる」といったことができるようになりました。

    一次情報をつくり出すのがメディアですから、広告運用の文脈で言い換えればインベントリを生み出すことができるのがメディアです。トレンドに振り回される必要はありませんが、最新の情報やデータをうまく運用に取り入れ、オールアバウトの色に染めていくことで、メディアの価値を上げていくことができると考えています。


    ●素晴らしいですね。本当はこの流れでキュレーションメディアとかネイティブ広告の話も聞きたいですが、それはまた別の機会に…(笑)。最後に、小林さんから見た運用型広告の展望などがお聞きできればと。

    私見ですが、3つの方向性があると思っています。

    1つは、より一層のプライベート化です。これは、プログラマティックプレミアムのようなプライベートディールが増えるという意味ではなく、デマンドサイドの広告運用者とメディアが今まで以上に密接に連携していくことで、データの共有、精度を上げていく施策ができるという意味です。

    データを活用してターゲティングを今より一層細かくしていこうという意味ではなく、デマンド、サプライ双方にとって有益なクラスタリング(分類)を作ったり、その精度を上げていくことができるのではないかと考えています。全体がそうなっていくというよりは、一部で先進的な取り組みが進んでいくといった流れをイメージしています。

    2つ目は、展望というより希望ですが、メディア側のアドテクノロジーに関する取り組みを発信する機会を増やしていきたいと思っています。アドテクノロジーはデマンド側の情報こそたくさんありますが、メディア側はベールに包まれていると言いますか、情報がなかなか出てこないことが多いです。

    もちろん、ソーシャルやキュレーションというジャンルでのメディアは事例や情報が出ていますが、我々のような一次情報の発信を行なっているメディアからはなかなか情報が出ていないため、実際にはそうではないにも関わらず、取り組みが遅れているという評価になりがちです。オールドメディアと揶揄されたりもしています。

    オールドメディアからの発信が増えた結果、何がどう変わるかは正直分かりませんが、少なくとも情報の非対称性は解消していきたいと思っています。メディア側が遅れているという評価が変わることで、先進的な取り組みも徐々に増えていくのではないかと、そのように考えています。

    最後3つ目は、情報を出すだけでなく、繋げる機会を増やしていきたいということでしょうか。個別の情報交換だけでは取り組みは拡がりませんし、一方的な情報発信だけでも不十分です。デマンド側はオフラインのイベントや会合が頻繁に開催されていると思いますが、その場にメディアがいることは必ずしも多くありません。

    一人や一社でできることは限られていますので、様々なプレイヤーが繋がることで、メディア側の広告運用にも「場」ができるのではないかと考えています。みんなで盛り上げていきたいですね。


    ●本日は貴重なお話、ありがとうございました!

    All About(オールアバウト)

    アドテクノロジー市場の資金が動画とDMPに流れた2014年 〜AGC Partners のレポートから

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    2014年のアドテクノロジー分野のM&Aレポート

    ベンチャーキャピタルのAGC Partners が、2014年のアドテクノロジー分野のM&A(企業合併/買収)を取りまとめたレポート『AdTech M&A in 2014 and Beyond: Trends and Drivers in an Evolving Landscape』を発表しました。



    リンク:AdTech M&A Update 2014 - AGC Partners
    ※リンク先からPDFがダウンロードできます


    レポートでは、プログラマティックなディスプレイ広告が2013年から2017年までの5年間で年率約36%の成長率を示すだろうという IDC の予測のほか、モバイル広告も同様の年率35%成長を示し、2018年には全世界で730億ドル(約8.6兆円)の規模に達するだろうという Magna Global の予測(※表1)を引き合いに出し、企業買収もその勢いに合わせるように活発化していくと述べています。

    ※表1 Source: AGC Partners


    実際、2014年のアドテクノロジー関連企業の M&A の件数は2013年のほぼ2倍の件数になっており、買収額も1億ドル〜4億ドル規模の案件が多くなっているとのこと。2014年の第三四半期(7−9月)は、「ポスト・ドットコムバブル」と言われた2013年第三四半期の買収総額を超えており、テクノロジー部門全体として見ても3番目に大きな市場になっていたとのことです。


    「動画」と「DMP」が投資のキーワード

    アドテクノロジーの中では、「動画」「DMP」が M&A のキーワードのようです。

    動画は、動画広告市場の成長に伴い M&A の件数が昨年の2倍に伸びたとのことで、Facebook による LiveRail の買収や、Opera による AdColony の買収など、モバイル動画広告ネットワークがその代表例です。これまでテレビなどのオフラインに投資していた大手広告主も動画のモバイル視聴による効果測定や広告展開に可能性を感じており、広告主がついてきていることがベンダーにとっては大きいでしょう。

    DMP は、ご存知の通り2014年最もバズ人口に膾炙したアドテクワードの一つですが、Oracle による BlueKai の買収、RocketFuel による [x+1] の買収など、今年もっとも買収の標的になった分野と言えるのかもしれません。広告代理店も含めて、自社で微妙なシステムを構築するよりは、技術のある企業を買収した方が結果的に投資効率がよいと考える向きが大半のようです。(特に上場企業の場合は投資家への印象もいいのではという意見もあります)

    動画やモバイルなどの分野に限れば、2005年から2014年の約10年間に M&A に使われた金額は約510億ドルでしたが、2014年だけでこの分野に約150億ドルの資金が投下されており(※表2)、投資のモメンタムが加速していることが伺えます。

    ※表2 Source: AGC Partners


    そのほか、レポートにはこれまでの M&A をまとめたリストや、主要企業の M&A 履歴を表すチャート(※表3)などもあり、かなり興味深い内容になっています。


    ※表3 Source: AGC Partners


    レポートには一部日本の企業も含まれています。英語の文量も少ないので週末にぜひ原文をお読みになって下さい。

    アドテクノロジー市場の巨人たちがどの領域を強化しようとしているのか、改めて俯瞰するよいきっかけになるのではないでしょうか!

    データフィード広告の市場動向と環境変化【セミナー資料】

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    先日(2014年12月18日)に行われたフィードフォースさん主催のセミナー「リブセンス×アタラが語る!データフィード広告への急激な予算シフトの背景と最新活用事例」でお話しさせて頂く機会を頂きました。



    【セミナー開催】2014年12月18日(木)『リブセンス×アタラが語る!データフィード広告への急激な予算シフトの背景と最新活用事例』


    昨年も同様のテーマのセミナーを開催していまして、今回はあれから1年経って、商品リスト広告に代表されるデータフィード型の広告の市場環境がどう変化したのか?という問いからスタートしました。セミナーの構成上、あまりテクニカルな部分には触れず、データフィードが対岸の火事的な出来事ではなく、既にスタンダード化しつつある事実についてお伝えしました。

    スライドの中身は、先月(2014年11月)から今月(同12月)にかけて Markezineさんで書かせて頂いた以下の連載の内容をセミナーという場で改めて解説させて頂いたような感じです。


    データフィード広告を牽引する商品リスト広告へ急激な予算シフトが起きている/その進化の経緯に迫る (1/3):MarkeZine(マーケジン)
     
    データフィード広告はフラグメンテーションに対する有効な解決策の一つ/データフィード化が進む運用型広告 (1/3):MarkeZine(マーケジン)


    当日は、リブセンスの岩崎さん(インタビュー記事)がデータフィード活用の非常に具体的な事例を示唆に富んだエピソードとともにお話しされ、フィードフォースの川田さん(インタビュー記事)はフィードの中間処理の重要性について強く語られていたのが印象的でした。

    データフィード周りの話は、以前は「こういうことができるようになる」とか「こういう取り組みが始まっている」というレベルだったのが、2013年くらいから現実が非常に速いスピードで追いかけてきており、少し前の予測は既に現実のものになろうとしています。

    実践してる企業さんは皆さん本当にハードコアで、リスクを適切にテイクして、Low-hanging Fruit をムシャムシャと食べていらっしゃいます。なんでもかんでもやればいいというものではありませんが、カジュアルな挑戦が許容できる文化や体制や意思決定のスピード、そして技術へのオープンな姿勢が、事業の成否を分けるポイントになるのではないか、そんなことを思いました。


    前回のセミナー資料も Slideshare にアップロードしたので、今年も公開しようと思います。ご笑覧頂ければ幸いです。

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